Side Story
少女怪盗と仮面の神父 47
[5/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
るには民の協力が要る。アルスエルナの鎧を纏っている自覚を持った「お前達の」協力がな」
「!?」
ふと真顔になった彼がベッドの端に座り、驚きで僅かに引いたハウィスの頭を胸に抱え、後頭部を撫でた。
「一面的な物の見方に囚われ、衝動に駆られて安易な手法を選んだ点は擁護しない。義賊の犠牲になった者達に関しては、お前達自身が一生抱えていけ。だが、どうにかしようと足掻き続けたお前達の、諦めなかった強さを。諦められなかった弱さを。自分ではない誰かを思い遣る声を。私は受け止め、評価する」
今まで よく 頑張ったな。
……何を、莫迦な。
貴族の特権に、家長も僅かな蓄えも全部毟り取られ、離散してしまった一般家庭がどれほどあったか。
食料を得られず、小動物よりも小さな体のまま死んでいった子供がどれだけいたか。
浮浪者の自分でさえ気付けたのに、国を統括する王族が見抜けなかったなんて、ありえない。
武器を作る名目で調理器具まで徴収していく横暴な軍人達を。見目が良い女子供を連れ去り貪る金持ち達を。助けを求めて流れる血や涙を。その総てを止められる力が有りながら、今日に至るまで見ない振りで放置し続けてきたくせに。
何が評価するだ。何がよく頑張っただ。
そんな台詞を吐く資格、貴方には無い!!
そう、言い返したかった。
『王族がもっとちゃんと貴族を監督していれば、両親とあの子供は殺されたりしなかった! 他の子供達も、余計な苦しみを知らずにいられた! 私達だって、誰一人殺さずに済んでた筈だ!』と。
なのに
「……助けられ……なかった……」
食い縛った歯の隙間から溢れたのは、権力者への憎しみでも、八つ当たり染みた恨み言でもなかった。
「どうしてっ……! どうして、助けられなかったの!? どうしてっ!!」
愚かで無力な自分への憤り。理不尽な世界に放つ慟哭。
堪え切れなかった涙が次から次へと球になり、彼の衣服を滑り落ちていく。
「助けたかった! 護りたかったのよ!! マーシャルも誰も、もう苦しまないようにって!! 生きたいと願う皆が、皆で生きていけるようにって!!」
「ああ」
「なのに、どうして! どうして私が、あんな……っ」
あんな、細く頼りない体の少女を、死なせてしまった。
自分の手で、最悪の状況に追い込んで。
殺してしまった。
「……助けたかったの、にっ……!」
「……ああ」
頭を抱える腕に力が籠った。頭上で眉を寄せる気配がした。それだけで、彼にも彼なりの怒りや葛藤があったのだと気付く。助けたくても助けられなかったんだと。人の上に立つ王族だからこそ、どうしようもない事があるのだと。
……いや、違う。
本当は、彼に諭されるまでもなく最初から解ってはいたのだ。
ただ、
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ