Side Story
少女怪盗と仮面の神父 47
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義名分を掲げようと、振り上げた拳が辿り着く先には、双方の不毛な疲弊、蜜に群がる虫達の略奪合戦しかないと、無数の歴史書が雄弁に物語っている。
ならば、どうするべきか。
自分と相手の立場や持ち札を頭に叩き込み。
周囲の思惑に気を配りながら、自分と相手の最善手と悪手をすり合わせて妥協点を探り、相手にとって魅力ある花を持たせつつ、自分側に肝要な『応』をさりげなく引き出せ。
内政を預かると同時に、他国の賢しい治者とも渡り合わなければいけない執政者達に声を届かせたいなら、彼らと同等の腹芸程度はこなしてみせろ。
「私達権力者は、万能じゃない。幾万幾億の民が暮らすアルスエルナ王国を護る義務と制約の中で、都度都度最善と思われる将来像を選択していくしかないんだ。そして、可能性をより良く実現する為には、国民の協力が要る。アルスエルナの鎧を纏っている自覚と自負を持った、お前達の協力がな」
「??」
ふと真顔になった彼がベッドの端に座り。
驚きでわずかに引いたハウィスの頭を胸に抱え、後頭部を撫でた。
「一面的な物の見方と感情に囚われ、衝動に駆られて安易な手を選んだ点は擁護しない。義賊の犠牲になった者達への負い目に関しては、お前達自身が一生抱えて墓の下まで持っていけ」
だが、どうにかしようと足掻き続けたお前達の、諦めなかった強さを。
諦められなかった弱さを。
自分ではない誰かを思いやる声を。
私は受け止め、評価する。
「今まで、よく、頑張ったな」
……何を、バカな。
家長も家畜もわずかな蓄えも、全部を貴族の特権に毟り取られ。
そのせいで離散してしまった一般家庭がどれほどあったか。
喉を潤す水も、腹を満たす食料も得られず、小動物よりも小さな体のまま死んでいった子供がどれだけいたか。
浮浪者の自分でさえ気付けたのに。
国を統括する王族が見抜けなかったなんて、そんなことはありえない。
武器を作る名目で調理器具まで徴収していく横暴な軍人達を。
見目が良い女子供を連れ去り貪る金持ち達を。
助けを求めて流れる血や涙を、そのすべてを止められる力がありながら。
今日に至るまで見ないフリで放置し続けてきたくせに。
何が評価するだ。
何がよく頑張った、だ。
そんなセリフを吐く資格、貴方には無い??
そう、言い返したかった。
王族が貴族の素行を監視していれば両親とあの子供は殺されなかった!
他の子供達も、余計な苦しみを知らずにいられた!
私達ブルーローズだって、誰一人殺さずに済んでいた筈だ! と。
なのに。
「……助け、られ……、なかった……っ」
食い縛った歯の隙間から溢れた音は。
権力者への憎しみで
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