ターン78 鉄砲水とシャル・ウィ・デュエル?
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さあ……」
「はて、何か問題でも?」
煮え切らない態度の僕に、ちょっと不満げに小首を傾げる葵ちゃん。そう、この作戦にはひとつだけ、致命的な欠陥がある。いつになく渋い顔の僕から何かあると察したのか、じっとこちらを見つめてくる彼女の視線からすっと目を逸らす。
「実は……」
「実は?」
表面上はいつも通りクールぶっているけれど、付き合いの長い僕にはわかる。このキラッキラした目、内心では好奇心に満ち溢れているはずだ。
というか、少し考えればこんなこと、彼女ならすぐわかりそうなものなのだが。
「だってあの夢想だよ?なんべん考えてみても、チャンスがその1回だけなら全然勝てる気がしないんだもん!」
「……じゃ、河風先輩呼んできますね」
「待って!」
聞いてやって損した、とばかりにひょいっと立ち上がり、静止の声も聞かずにすたすたと出ていく葵ちゃん。と、目の前で閉められた扉が開き再び彼女の顔が見える。
「わざわざ言う必要もないとは思いますが、もし逃げ出したらどうなるかはわかってますね?今ならまだ痴話喧嘩で済んでますが、今度こそ破局待ったなしですよ?」
それだけ言い捨てて、無情にも再び目の前で扉が閉められた。うう。
それから、きっかり10分後。もう150回目ぐらいになる人の字を手のひらに書いては飲み込む作業を続けていた僕の耳に、控えめなノックの音が聞こえてきた。こんな大人しいノック音、葵ちゃんが出すはずがない。というかそもそも、葵ちゃんがこの部屋に入るのにノックなんてするわけがない。そろそろ、覚悟を決める時が来たのだろう。一体どうやって夢想をここに来させたのかは知らないけれど、それをやってのけてくれた葵ちゃんに心の中で礼を言う。
「お邪魔するね、って。葵ちゃん、私に話って……」
聞きなれた声が聞こえてきて、すぐにおずおずと扉が開く。その向こうに立っていたのは、当然のごとく彼女。
「あれ、清明?なんでここに……って、葵ちゃんはどこ?ってさ」
ああ、そういうことね。ついさっき言ったばかりの礼の言葉を、心の中で即座に取り消す。僕がいることは明かさず、夢想をこの場に呼びつけて……ったく、なんてややこしい丸投げをしてくれたんだ。どうせ今頃葵ちゃん、『良いことをすると気持ちがいいですね』とかドヤ顔で呟きつつその辺でドローパンでも食べてるんだろう。その光景がパッと目に浮かぶ。
彼女をどうしてくれるかは後で考えるとして、問題は今を僕がどう切り抜けるかだ。あれだけ会いたかった相手なのに、こうして話をすることをずっと待っていたはずなのに、なぜだろう。はっきり言って今、めっちゃ気まずい。
「む、夢想!」
「……何?ってさ」
「あ、あのさ。ペアデュエル大会ってあるじゃない?まだペアが決まってない
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