異説外伝『知られざる異次元体』
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エーテルアサルト。
訪れるであろう「何か」を感じた時、反射的にそのスキルを発動させていた。
ボルトテクスチャーからプラズマテクスチャー、そしてエーテルテクスチャーへ進化した戦闘防護服がなければ、「アレ」は防げなかっただろう。
エーテルテクスチャーが展開できるのは、おそらく私しかいない。それが分かっている分、余計に心を苦しめる。
そして……決着となりし時が訪れる事を示している。それも知っているからなおさらだ。
――アオイ=カズハの、敗北へと続く戦いが始まろうとしていた――
心が、何度折れそうになっただろうか。
約束された敗北を前にして、カズハの喉から嗚咽が込み上げてくる。
私は戦わなきゃいけない。そう決意したはずなのに……深い悲しみが彼女を押し潰す。存在自体を砕いていく。
そして、黒髪の少女は言葉を紡いだ。
「エーテルテクスチャー……展開」
淡い蛍のような光が、カズハの周囲を構成していく。幻想的に展開される戦闘防護服は、地球上の物語でしかありえない光の羽衣のようでもあった。
私がエーテルの概念をもっと早く理解できていれば、みんな助かったかもしれない。あのフリージングからみんなを護れたかもしれない。果てしない後悔と懺悔が押し寄せてくる。
「エーテルウエポン……」
パンドラ専用の得物を精製しようと、カズハの右手は背中の聖痕に届く。従来のボルトウエポンなら、そのような不自然な動作は必要ない。だが、これから挑む戦いには並みのボルトウエポンでは話にならない。前代未聞のボルトウエポン精製を、カズハは挑もうとしていたのだ。
「……ぐっ!」
力ずくで自らの聖痕をむしり取り、掌に収める。気を失うような激痛でも、カズハは平然とたいていた。熟成された聖痕は肉体を構成する一部となる為、そのようなカズハの行為は本来自殺行為に等しい。人体に馴染んだ聖痕を強制除去されれば、激しいメンタルショックを受けるはずだ。それは治療できるかわからないし、どんな後遺症が残るか分からない。下手をすれば命を落とす事さえあるかもしれない。
だが、カズハは違う。
きっと、重度のプレッシャーが、彼女の痛みに対する神経を麻痺させているのかもしれない。
「展開!!」
彼女の手中にある聖痕は、青白い神秘的な光球に包まれていき、複雑な工程を得て一つの得物となる。
工房の役目を果たす光球は役目を終えると、光の粒子となって四散する。
光の中から現れたのは、伝説上の宝具かそれとも、神話に登場する神器と印象づける「カズハ専用のボルトウエポン」だった。
至高、いや、それどころか人間の概念を遥かに超越したボルトウエポン。
聖痕から精製されたそれは、聖剣と呼称するのにふさわしい。
アンチノヴァシリーズの一つ、ノヴァブラッドと呼ぶべきモノではない。
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