巻ノ百二 百地三太夫その十二
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「ですから」
「あの者達については」
「崇伝殿の言われる通りです」
「許してはおけまえぬ」
「本朝には置けませぬ」
「そうじゃ」
まさにというのだ。
「だからな」
「はい、それでは」
「あの者達は」
「わしも同じじゃ」
その考えは家康と、というのだ。
「本朝には置けぬ」
「天下万民の為」
「何としてもですな」
「幕府は国も民も保たねばならぬ」
その双方をというのだ。
「万全にな、だからな」
「切支丹は許せぬ」
「そういうことですな」
「そうじゃ、あと本朝の銀が貿易でどんどん外に出ておったが」
日本の外にだ。
「これもじゃ」
「はい、防いでいきますか」
「大御所様のお話の通りにされて」
「そのうえで」
「うむ、止める」
そうするというのだ。
「どうも南蛮の者達はそこでも胡散臭い者が多いわ」
「信仰でも商いでも」
「そのどちらでも」
「本朝を狙っている」
「そうした者が見受けられますな」
「うむ」
そうだとだ、秀忠は答えた。
「御主達もそう思うな」
「切支丹のことや伴天連のことを見ますと」
「やはりそうかと」
「南蛮貿易は実入りがありますが」
「そうした危うさもあります」
「そうじゃ、明も近頃屋台骨が危ういというし」
この国もというのだ。
「あちらの帝がどうにというな」
「はい、何も政を執られずです」
本田正信が秀忠に話した。
「宮中に篭られ」
「酒色に溺れておられれるか」
「朝議に出られることはないとのことです」
「そうか」
「そして傍の者達が好きにしてです」
本多は宦官とは言わなかった、彼にしても本朝になかった存在なのでどうにもわからないものだからだ。
「政は大いに乱れているとか」
「そして民は苦しんでおるな」
「重税と無策により」
「そうした有様が続いて長いな」
「もうかなりです」
「ふむ、明も倒れるやもな」
秀忠は本多のその話を聞いて述べた。
「やがては」
「はい、相当に屋台骨が強くそうそうとはならぬと思いますが」
「それでもじゃな」
「その様な有様ですとです」
「国が倒れぬ方がおかしいな」
「左様です」
「幕府としてはなってはらなぬことじゃ」
その明の様にはというのだ。
「決してな」
「その通りです」
「政に励む身を慎み」
「民を第一に考えていくべきです」
「全くじゃ、竹千代にもそれは言っておく」
嫡男の彼にもというんだ。
「どうも奥は国松の方を可愛がっておってな」
「国松様がお可愛い」
「そうなのですか」
「やはり我が子じゃ」
だからこそというのだ。
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