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真田十勇士
巻ノ百二 百地三太夫その七

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「よいな」
「そうさせて頂きます」
「それではな」
 霧隠にだ、百地は己の術を授けていった。そして霧隠もまたその術を行っていきそうしてだった。
 強くなっていった、霧にだった。
 眠り薬を入れて出した、するとその霧でだ。
 山の多くの獣達が眠った、百地はそれを見て言った。
「よきことじゃ」
「これで、ですな」
「強き術こそ正しく使うべきじゃ」
「だからこそ」
「そこに強き毒を入れずな」
「眠らせる程度ですな」
「そうしたものを含ませてじゃ」
 そうしてというのだ。
「わかり申した」
「それでよい、その術でな」
「いざという時はですな」
「戦うのじゃ」
 こう霧隠に告げた。
「よいな」
「さすれば」
「間違っても毒を入れてはならぬ」
 殺す様なそれはというのだ。
「無駄な命を奪うな」
「断じて」
「それは忍術ですらない」
「外道ですな」
「それじゃ」
 まさにそれだというのだ。
「御主は外道になるな、何があってもな」
「そのお言葉肝に銘じておきます」
「真田殿は非常に澄んだ目をしておられる」
 幸村のその目を見ての言葉だ。
「そして御主もな」
「殿と同じく」
「よい目をしておる」
「だからですな」
「そのままじゃ」
「澄んだ目のまま」
「戦いそして志を遂げていくのじゃ」
 それ故にというのだ、百地も。
「霧にもそれを活かせ、霧に死に至るものを入れれば魔道になる」
「魔の道ですか」
「幕府を見よ」
 家康が興したそれをというのだ。
「徳川殿は魔道か」
「いえ」
 霧隠は師にすぐに答えた。
「決して」
「そうじゃな」
「織田殿は覇道でありましたが」
「徳川殿はどちらになる」
「王道かと」
 それだというのだ。
「あの方は」
「そうじゃな、そうしたことは決してされぬな」
「大御所殿も他の方も」
「確かに謀は使われる」
 それはというのだ。
「戦国の世のままな、しかしじゃ」
「外道はですな」
「されぬ」 
 それは決してというのだ。
「大御所殿も他の御仁もな」
「霧に毒を入れることは」
「あくまで王道を進まれる」
 家康も彼の周りの者達もというのだ。
「謀も王道の謀じゃ」
「そうしたものであり」
「わしが思うに真田殿と御主達は幕府とは相容れぬ」 
 幸村、そして十勇士達はというのだ。
「決してな、しかしな」
「王道に外道で挑んでは」
「話にもならぬ」
 その様な有様ではとだ、百地ははっきりと言い切った。
「左道で天下を取った者もおらぬわ」
「はい、確かに」 
 霧隠は百地が霧の中に隠れ彼の後ろに来てそこから一撃を浴びせようとしたのをかわした、彼もまた霧となってだ。
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