巻ノ百二 百地三太夫その二
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「よいな」
「わかり申した、さすれば」
「既に場所はわかっておる」
その者の居場所はというのだ。
「今よりそこに行くぞ」
「さすれば」
霧隠も頷きそうしてだった、二人ですぐに九度山を後にした、そうしてそこから真田の忍道を通ってだった。
伊賀の奥深くに来た、霧隠はその山の中を見回してそのうえで幸村に言った。
「もうここまできますと」
「誰もじゃな」
「いるのは山の民か獣か」
「それか天狗位じゃな」
「ですな、後は妖怪でしょうか」
この辺りにいるならというのだ。
「それこそ」
「そうした場所じゃな」
「はい、そしてここにですな」
「あの方がおられる」
「そうなのですな」
「気配は感じるか」
「いえ」
そう言われるとだ、霧隠はすぐに周囲の気配を探った。しかしそうしたものは一切感じられず幸村に答えた。
「全く」
「うむ、拙者もじゃ」
「我が師です」
だからだと言う霧隠だった。
「ですからそう簡単にはです」
「気配もじゃな」
「探らせてくれませぬ」
そうだというのだ。
「中々」
「左様じゃな」
「はい、ですから」
それ故にというのだ。
「これからはです」
「この目で探そう」
「はい、しかしですね」
「ここにいることはわかっておる」
このことは間違いないというのだ。
「あの御仁はな」
「そうですか、それではですね」
「うむ、二人で探そう」
「それでは」
霧隠は主の言葉に頷き早速探そうとした、しかしここで不意にだった。二人の前に小柄な白い総髪の老人が出て来た。
その老人を見てだ、霧隠はすぐに片膝を突き老人に言った。
「師匠、お久し振りです」
「ほっほっほ、気付いたか」
「今まで気付きませんでした」
「いや、気配は完全に消しておった」
老人は霧隠に穏やかな声で答えた。
「そのわしに気付くとはじゃ」
「それは、ですか」
「見事じゃ」
そうだというのだ。
「それが出来ることはな」
「そう言って頂けますか」
「それでなのですが」
今度は幸村が老人に言った。
「百地三太夫殿ですね」
「如何にも」
その通りだとだ、老人は幸村に答えた。
「左様でございます」
「それがし真田源次郎幸村と申します」
「はい、来られると思っていました」
「既にですか」
「気配で感じ取っていましたし」
それにというのだ。
「しかも来られる理由があるとわかっていましたので」
「だからですか」
「はい、某に才蔵をですな」
「もう一度鍛えて頂きたいのです」
是非にとだ、幸村は百地に申し出た。
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