第20話『混迷の時代の願い星〜勇者の新たなる旅立ち』【Bパート 】
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れとも、勇者が『この案件』を引き受けたことに対する安堵からだろうか?
だが、王から発せられた次の言葉で、『打算』なきものと理解する。
「どうか……エレオノーラを――」
声を区切り、詰まる喉から彼女の愛称を告げる。
「エレンを……頼む」
一瞬、凱の感情が虚空の彼方へ映ろうとしていた。
彼自身、彼女に愛称を呼ぶことを許してもらっていない。
当たり前だ。ヴィクトールとエレオノーラは『王』と『戦姫』の主従関係。二人には常に『公』が必ず付きまとう。
それでも……それでも……
許されるなら、今一人の『人間』として告げたかった。
義理息子の忘れ形見の……エレオノーラという真名ではなく、エレンという愛称で――
王さえも自覚のなかった『弱さ』を知った勇者の返答は簡潔を極めた。
「はい」
たった一言……たった一言だけ勇者は答えたのだった。王の止めかけていた涙が、再び溢れかえる。
それだけでも、王にとって全てが救われたような気がした。
そして――
ヴィクトールが虚空回廊へ去り、やがて一人になったヴァレンティナを凱は呼び止めた。
「ティナ……」
だが、ヴァレンティナは凱に振り向くことはなかった。
脳裏によみがえる幻想の記憶。
――『獅子王凱』だ。今日は美女の電撃来客だな。望んでもいねえのに――
どうして、彼女が独立交易都市へやってきたか。
――私はオステローデから参りました「ヴァレンティナ」と申します――
なぜ、凱と接触を図ったのか。
――私の事はティナと呼びなさい。今度から他人行儀みたいな呼び方したら口を聞いてあげません――
それらは全て遂行すべき『任務』故に行ったこと。
――これ欲しいです!――
でも……キミと過ごしたあの時だけは、本当に……かけがえのない大切なものだったんだ。
「君にとっては『任務』だったかもしれないけど……俺にとっては大切な『幻想』だと思っている!俺はそう信じている!」
切に――まっすぐにほとばしる凱の想い。
もし、彼女の本心が望まなくても、凱は自分の気持ちを偽ることが出来なかった。
誰かの為にウソをつく。以前、ティグルにそう話をしていたことがあったのを思い出す。
彼女だって、掛け替えのないものを守る為に、自分を偽り続けてきたはずだ。
幻想は現実へ解けていくけれど、『記憶』だけは残るもの。
「例え……ひとときの『夢』だったとしても」
最後に絞り出した――凱の言葉。
だから――余計に分かってしまうのだ。影の裏側にある『光』のような一面を。
果たして……凱の言葉はヴァレンティナに届いたのだろうか?
「ガイ」
静かな声。勇者の名を呼ぶ戦姫のつ
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