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幻影想夜
第二十六夜「霧の中」
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と戻っていた…。
「あれ…何だったんだ…?」
 大輔がそう洩らした時、深い霧の中から静かに…一人の兵士が姿を現した。
「爺…ちゃん…。」
「孫か…こうして会えるのも、タエのお陰だ。どんなに感謝してもしたりない。そして…どんなに謝っても謝り切れない…。」
 誠一郎はそう言うと、寂しげな表情を見せながら大輔の頭を撫でた。
「大輔、今こうして生きていられるのは、皆が命を守り抜こうと必死で頑張ってきたからだ。私や仲間たちは確かに…多くの人を殺めた。だが、これだけは知っていてほしい。それは日本人だけじゃない…皆人であり…皆…他人を傷付けたくはなかったのだ…。」
 そう言うや、誠一郎は大輔を抱き締めた。
 息子…大輔の父を抱けなかった分も強く…強く…そして、優しく…。
「立派な人物に…とは言わない。だが、人を蔑み、天秤にかけるようなことは止めなさい。人はいつまでも若くはなく、いつまでも生きていられる訳でもないのだ。だから…大切にしなさい…。」
 誠一郎はそう言うと名残惜しそうに大輔から離れ、また深い霧の中へと戻って行く。
「爺ちゃん!」
 無意識に涙を流しつつ大輔は叫ぶと、誠一郎は一度振り返り、にっこりと微笑んで…霧と共に消えていったのであった…
 気付けば…夜空には満天の星々が広がり、目の前には最早、いつもの山道が広がっているだけであった…。

 そんな不可思議な体験をして数週間後…。
「へぇ…彼女と縒り戻したんだ。」
 公司が驚いたように言う。隣に座る茜に至っては言葉もない。
 毎度彼女を作っては浮気がバレて別れる…を繰り返していた大輔が、フラレた彼女に頭を下げて謝罪したと言うのだから、驚かない方が無理と言うものだ。
「実はさ、あいつ…子供出来ちゃったらしくて。それを相談しようとした矢先に浮気がバレて喧嘩別れしたもんだから…。」
 何とも言えない表情をして話す大輔。
 目の前の二人もどう返したものかと顔を見合わせたが、そこに大輔が言葉を繋げた。
「でさ…あいつ堕ろすかどうか悩んでたらしいんだけど…だから…結婚することにしたんだ。」
「…っ!!」
 今度は公司さえ言葉もない…。
 二人は暫く黙したまま固まっていたが、ふと…茜が口を開いた。
「あれってさ…このことだったんだね…。」
 その言葉に、公司も大輔もハッとして茜を見た。
 そう…あの夢とも現ともつかない不可思議な体験。あの時、大輔の祖父…誠一郎は確かに大輔と会話した。会話とは言い難い稚拙なものではあったが、大輔は今でも祖父の温もりと頭を優しく撫でられた感触を覚えている。
 その時誠一郎が伝えようとしたのは、正しく人の…命の尊さだった。
「爺ちゃん…子供出来たの知ってたんだな…。だから…俺を叱りに来てくれたんだ…。」
 大輔は拳を握りしめ、寂しそうにそ
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