第二十六夜「霧の中」
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えるように口を開いた。
「なぁ…確か、あの山の上ってさ…大戦で死んだ兵士の慰霊碑があったんじゃね?」
その発言に、公司も茜も眉を顰めた。
「大輔…今、そんなこと言うのは止めてくれよ…。ただでさえこの霧で立ち往生してるんだからさ…。」
「そうじゃなくて、あの音…公、お前銃声だって…。」
大輔の言葉に、公司も茜も蒼褪める…。
- パーンッ! -
再び同じ音が響き渡り、三人は山の頂上へ視線を向けたが、視線を目の前へと戻した時…辺りは一変していた。
彼らは山道に車を停めていたはずだが…そこは見慣れない町の様相を呈していた。
そこは深い森に囲まれているいるようだが、その森に自生するであろう植物は日本のそれとはかなり異なり、町も全くの異文化で構築されている…。
「ここ…どこだ…?」
「分かんねぇ…けど、あれさ…ヤシの木ってヤツじゃねぇの…?」
「何だか…南国って雰囲気だけど…。」
確かに、パッとした見た目は南国の町であるが…家々は何かで破壊され、そこかしこに煙が上がっている。
よく見れば…瓦礫のしたや道端に、以前は人だったであろう真っ黒に焼け焦げた何かや、人の手足だったもの…人の中に収まっているべき何かが…無造作に散乱している…。
三人は目を背けることも出来ず…ただ呆然と見ているほかなかったが、そこに日本人…その兵士らしき一団が現れる。
それは三人が驚く間もなく、破壊された町並みの中へと入って行くが、まるでこちらが見えていないようであった。
「な…なんなんだよ…これ…。」
「戦争…なのかしら…。」
余りのことに公司と茜はそう呟くが…大輔だけはある人物を目で追いかけていた。
「爺ちゃん…!」
大輔が目で追っていた人物は…肩を負傷しつつも銃を構えながら進む彼の祖父の姿だった。
大輔の祖父…誠一郎は、第二次大戦中に戦死し、大輔は残された数枚のモノクロ写真でしか祖父を知らない。
誠一郎が出兵する時、既に大輔の父を祖母は身籠っていた。戦火を逃れ、赤子を産み…戦後も大変苦労した祖母。
だが、祖母は誠一郎のことを話す時、いつも笑顔を絶やず、祖父は優しくて勇敢で…とても人を愛していた人物だと話していた…。
だが、なぜ三人の前にこの様な光景が現れたのか…全く見当もつかず、ただただ静観するしか出来ないでいた。
その中で…大輔は歩み行く祖父を追おうと足を一歩出した刹那…。
「来るんじゃない!そこにいろ!!」
「…!!」
三人は目を見開いた。
目の前の光景は幻…なのだと思っていたのに、あの男性…誠一郎は、ハッキリとこちらを振り返り、三人を見て怒鳴ったのだ…。
まるで…最初からこちらの存在を分かっていたかのように…。
しかし、次の瞬間には再び濃い霧が一気に辺りを覆い隠し…気付けば山道へ
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