第二十六夜「霧の中」
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」と睨み付けると、二人は震え上がって「はいっ!」と背筋を伸ばして返したのだった。
さて、人間とは喧嘩しようと反省していようと腹は減るもの。三人は夕食を食べに行こうと、車に乗って夜の山道を隣町へと向かった。
この町は夜七時ともなれば、どこの店も閉めてしまう。唯一…コンビニだけが町の一画を照らしているだけだ…。
隣町に行けばファミレスもあるが、行くには山道を車で片道四十分は掛かる。だから土地が安かったのだ…。
車の中では喧嘩のことを未だ突いてくる茜にビクビクする二人が、それでも話をすり替えながら隣町へと向かう。
だが、ふと…どこからか何かの弾けるような音が響いた。
「ねぇ…今、何か花火みたいな音…しなかった?」
「花火…な訳ねぇよ。もう十一月だぜ?祭りも全部終わってんじゃん。」
茜の言葉に大輔がそう返したが、運転している公司は花火の音には聞こえなかった。
公司は路肩へと静かに車を停めると、真正面を見詰めながら二人へと言った。
「あれ…銃声だぞ…。」
「はっ!?こんな熊もいねぇ山で、こんな時期に猟でもしてるってのか?」
大輔は後部座席から身を乗り出し、顔を顰めながら公司へと言う。助手席の茜も眉間に皺を寄せている。
それから三人は十分ほど耳を欹てていたが、それきり何の音も聞こえてこず、何とか気を取り直して車を出した。
道は然して広いわけではないが、所々には対向車を避けるための路肩があり、これと言って難はない。だが、月明かりを遮る山並みは、辺りを深い暗闇へと誘い…夜に車を走らせるには馴れてないと危険だ。
そんな山道を、公司は慎重に車を走らせる。もう住んで八年…この山道が彼の通勤する道なのだから、彼にとって難はない。
…が。
「あれ…?」
公司は一瞬…そこが見覚えのない道に見え、スピードを落とした。
すると、突然辺りを深い霧が覆い始め、公司は驚いて車を再び路肩へとつけた。
他二人もこれには目を丸くし、何事かと外を見ている。
「何よ…これ…。」
「いくらなんでも…こりゃ変じゃねぇか…?」
確かに…この日は気温が高く、晩秋にしては暖かな夜である。こんな夜霧を発生させるような川も沢も近くにはないはずなのだが…。
どうしたものかと公司は車から降りて辺りを見回すが…。
「こりゃ…運転は無理だな…。」
見渡す限り霧…霧…霧…。ガードレールも道路の白線さえも見分け難く、数メートル先は全く判別出来ない。
「…どうするかなぁ…。」
これは困ったと言う風に公司は溜め息をつき、頭を掻きながら車に戻ろうとした時…。
- パーンッ! -
またどこからか何かの弾ける音が聞こえ、その音に茜も大輔も車から降りた。
「また…ねぇ、何かおかしくない?」
茜は心配そうに言うと、大輔はそれに答
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