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子供ではない
第五章
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「俺は完全に犯罪者か」
「いや、まあそれは」
「そうとしか見えなかったんで」
「悪気はないですよ、俺達も」
「万引きとかカツアゲとかいじめとか大嫌いで」
「こんな外見でも」
「それはいいけれどな、何かな」
 智和はあらためて思うのだった。
「俺はそんなに怪しく見えるか」
「まあ奥さんが小さいですと」
「子供にしか見えないと」
「何ていいますか」
「そこは」
 不良少年達も恐縮して言うばかりだった、何はともあれ今回も智和の疑いは晴れたがしかしだった。
 中華街と同じ神戸市にある家に帰ってだ、智和は碧に真剣な顔でこう言った。
「どうしたものか」
「これで二回目だしね」
「疑われるのはな」
「また疑われるわよね」
「ああ、絶対にな」
 智和は苦い顔で応えた。
「また誤解が晴れるとも限らないしな」
「どうなるかはね」
「わからないよな」
「どうしたものかしら」
 碧も困った顔で言う。
「このことは」
「そうだな、俺がそんなに怪しく見えるか」
「いえ、私の問題みたいよ」
「碧ちゃんの?」
「だって私が小柄で童顔で」
 左手の人差し指で自分自身を指し示しつつ話す。
「中学生、小学生に見えるから」
「淫行だの誘拐だのか」
「思われるのよ、実際ね」
「俺が不審者にしか見えないんじゃなくて」
「あなたは別にね」
 智和の方はというのだ。
「そうは見えないけれど」
「歳相応と童顔だとか」
「どうしても不釣り合いでね」
 碧はその童顔で話した。
「思われるのよ」
「じゃあどうすればいいんだ」
「多分ジーンズやジャージでも言われるし」
 服装以上に背や外見だとだ、碧は自己認識から述べた。
「他のことでね」
「他のこと?」
「そう、私が子供に思われなかったらね」
「いいか」
「そうじゃない?」
「しかしあれだろ」
 智和は碧のその言葉を受けて彼女に言葉を返した。
「碧ちゃんの背と顔は」
「変えられないっていうのね」
「ちょっとな」
「顔はメイクで変えられるし」
 その童顔をというのだ。
「背もね」
「いや、背は無理だろ」
「無理じゃないわよ、工夫よ」
「工夫?」
「そう、ちょっと考えがあるから」
 碧は智和に真剣な顔で言うのだった。
「実は前にしようって思っていたことだし」
「前に?」
「それでやってみるわね」
 こう言ってだ、碧はそのやってみようと思っていたことを含めて智和が不審者と疑われない為のことをしてみた、するとその結果だった。
 智和はもう碧と一緒に外を歩いても不審者だの誘拐犯だの淫行だのカルト教団だの言われることはなくなった。このことを会社でも上機嫌で話した。
「いや、よかったよ」
「というかあの奥さんだとな」
「そりゃ思われるな」
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