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行方不明
第一章
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                 行方不明
 広沢匠は大学に通っている、量の多い黒髪の上の部分を伸ばしてやや立たせている。薄めの眉は奇麗な鈎型で奥二重の目は小さめだ。面長の顔は白くピンクの唇は小さく引き締まっている。小学校からしている水泳のお陰で一八三センチある身体は実によく引き締まっている。
 だがその彼は今悩んでいた、その悩みは何かというと。
「お金欲しいんだよな」
「お金?」
「ああ、運転免許手に入れたからな」
 こう友人の矢田直希に大学の中で話した、やや色黒かつすっきりとした頬と確かな形の唇に優しい感じの奥二重の目とやや癖のある黒髪をショートにした一八〇位の背丈の彼に対して。
「だから車欲しくてな」
「それでか」
「お金が欲しいんだけれどな」
「親は出してくれないのか?」
「いや、家の車はあるんだよ」
 直希にすぐに答えた。
「軽四がさ、姉貴がもう免許持ってて親父もお袋も免許持ってるし」
「つまり御前の車が欲しいんだな」
「そうなんだよ、スポーツカーな」
「スポーツカーか」
「サーキットの狼みたいなな」
「古いな、おい」
 匠が出した漫画にだ、直希はすぐに突っ込みを入れた。
「それはまた」
「古いか」
「古いだろ、俺達が生まれるずっと前の漫画だろ」
 そうした漫画だからだというのだ。
「続編だってかなり前だろ」
「そういえばそうか」
「よくそんな漫画知ってるな」
「車の漫画っていったらって思い出してな」
「それでか」
「ああ、とにかくスポーツカー欲しいんだよ」
 匠は直希にかなり切実な顔で話した。
「俺だけが乗るな」
「スポーツカーな」
「高いけれどな」
「じゃあ身入りのいいバイトしないとな」
「コンビニじゃ駄目か」
 彼が今働いている家の近所のそれである。
「やっぱり」
「深夜バイトは割よくてもな」
「やっぱり足りないよな」
「ちょっとな」
 直希も匠に真面目な顔で答えた。
「そうだな」
「そうだよな」
「それこそ捨て身でないとな」
「そこまでの金は儲からないか」
「ああ、本当にな」
「維持費もあるしな」
 車のだ、匠はこのことも頭に入れていた。
「うちの家は普通のサラリーマンだしな」
「親父さんはだな」
「お袋はパートで姉ちゃんはOLでな」
「どっちも普通だよな」
「普通の家だよ」
「じゃあスーパーカーはな」
「難しいよな」
 ちょっとやそっとのアルバイトで買って維持するにはだ。
「プレステやスマホと違うからな」
「スーパーカーだとマンションより高いな」
「だよな、けれど欲しいんだよな」
 かなり切実な感じでだ、匠は言った。
「本当にな」
「その為のお金か」
「そうなんだよ、もうてっとり早く確実にな」
「お金が欲しいだな
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