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賢者の石
第四章

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「伯爵は学問として」
「そうです、辿り着いたもので」
「富はですね」
「求めていませんしそうした考えからです」
「他の方にもですか」
「教えていません」
 そうしているというのだ。
「不老不死もです」
「そうなのですか」
「人はあまり過ぎたものをもつべきではないのです」
「それでかえって悪くなることもある」
「そうです、フランスに無限の富はです」
 それはというのだ。
「フランスを堕落させるだけなのです」
「贅沢や戦争に使われては」
「意味がないですね」
「はい、全く」
「そして不老不死もです」
「悪しき者を利するかも知れない」 
 そうした者が不老不死になりだ。
「そうしたものでもありますか」
「はい、そのことはくれぐれもです」
「わかりました、では」
 ベルナールはここまで聞いて頷いた、そのうえで伯爵にあらためて述べた。
「もう私はこれで」
「賢者の石はですね」
「求めません、そして不老不死も」
「はい、そうされた方がいいと思います」
「錬金術は賢者の石や不老不死だけではないので」
 その他にも突き止めるべきものがあるとわかっている、それがわかっているからこその返事だった。
「そちらを突き止めていきます」
「そうされると何よりです」
「その中で賢者の石に辿り着いても」
「それでもですね」
「誰にも教えません」
「そうされて下さい、人は知ってはいけないものもある」 
 伯爵の顔は穏やかなままだった、だがベルナールに確かな声で語り続けていた。
「そのことをよく覚えておいて下さい」
「わかりました」
 ベルナールは確かな声で頷いた、そしてだった。
 彼は伯爵に別れの挨拶をしてそのうえで彼の家を後にした、それから彼は二度と賢者の石について誰かに話すことはなくなった。
 だが錬金術と魔術は学び続けそうしてそこから得たものを医学に使い続けた。そうして人を助け続けた。その彼を人は優れた医者だと言ったがそれだけだった。彼は死ぬまで錬金術と魔術を学び続けたが賢者の石にも不老不死にも辿り着くことはなかったがそれをよしとした、人は過ぎたものを手にするべきではない。この言葉を遺言として。


賢者の石   完


                         2017・2・13
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