第三章
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「教えてくれませんか」
「そして貴方も賢者の石を持たれ」
「はい、そしてです」
彼は伯爵にさらに話した。
「金や銀、様々な高価なものにしてです」
「そのうえで貴方が」
「いえ、私はです」
ベルナールはこのことははっきりと言った。
「自分の富はいりません」
「貴方のものは」
「そうです」
ベルナールは自分が暮らせるだけの富は持っている、そして彼は自分の贅沢には然程興味がないのだ。
「私は今の暮らしで十分なので」
「そうですか」
「はい、そして錬金術には不老不死もあるそうですが」
「そちらもですか」
「興味がありません」
こちらもとだ、ベルナールは伯爵に答えた。
「そうしたことは王に」
「フランス王にですか」
「差し上げたいです」
「わかりました、では貴方には教えられません」
伯爵は一旦瞑目してそれからベルナールに言った。
「賢者の石のことも不老不死のことも」
「それは何故ですか?」
「はい、若し賢者の石がフランス王に伝わります」
ベルナールの手を介してというのだ。
「そうすればフランスには無限の富が得られますね」
「まさに、そうすれば今の財政危機を終わらせられます」
「そうなればどうなるでしょうか」
「どうなるかとは」
「フランスはその富で何をしますか」
伯爵は温和な笑みを浮かべていた、だがその目をじっとベルナールに向けていた。そのうえでこう問うたのだった。
「一体」
「と、いいますと」
「その富で新たな宮殿を築いたり王宮で贅沢に溺れ戦争をするのではないでしょうか」
「あの、それでは」
ベルナールは富がそうしたものに使われるだけだと聞いてだ、顔を曇らせてだ。そのうえで伯爵に言った。
「富を手に入れましても」
「意味がありませんね」
「私は富はです」
賢者の石がもたらしたそれがというのだ。
「民の為に使われてこそです」
「意味がありますね」
「そうだというのに」
「しかしそうしたものに使われませんか」
伯爵はベルナールを見たまま問うた。
「無限の富を獲れば」
「それは」
「そして若し間違ってラ=ヴォワザンの様な者が不老不死になればどうなりますか」
伯爵はベルナールに不老不死のことも問うた。
「その場合は」
「それは」
「恐ろしいことになりますね」
「あの様な者が不老不死になれば」
ベルナールは伯爵に血相を変えて答えた。
「この世は恐ろしいことになります」
「そうですね」
「はい、では賢者の石も不老不死も」
「そうです、並大抵なことではです」
「人の手にはですか」
「渡っていけないものです」
無限の富、そして不老不死等はというのだ。
「過ぎた力は」
「そうなのですね」
「それに溺れるか邪な者を利するので」
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