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休めない王
第三章

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「王と仕組みだ、ローマ帝国にはあった」
「その二つがですか」
「王と仕組みが」
「王ではなく皇帝だったがな」
 この違いはあるがというのだ。
「この二つが共にあった、だからあれだけ長く栄えた」
「しかしこの国には王だけ」
「王だけがおられるからですか」
「仕組みがないので」
「王がおられぬと」
「今も若し余が動かぬと終わってしまう」
 まさにだ、そうなってしまうというのだ。
「だからだ」
「王は今もですか」
「常に動かれていますか」
「ご自身で隅から隅まで見られ聞かれ決められている」
「そうされていますか」
「そうしておる、しかしその余がいなくなれば」
 その時はというのだった、また。
「国は分かれる」
「王しかおられない故に」
「治める仕組みがない故にですか」
「そうなりますか」
「このローマ帝国は続きませぬか」
「残念だがな」
 シャルルマーニュは玉座から無念の顔で言った、座ったばかりで温まっていないその座から。そしてその玉座もだ。
 彼はすぐに立ち次に行くべき場所に向かった、彼は今も休まなかった。もっと言えば休むことが出来なかった。
 そして遂にだ、シャルルマーニュも。
 かなりの衰えが目立つ様になってきた、すると彼の言葉通りにだ。
 彼の子達も諸侯達もだ、すぐに話をはじめた。
「父上もかなりのご高齢になられた」
「このことは確かに悲しい」
「しかし悲しんでばかりもいられない」
「これからどうする」
「どうして治めていくか」
「それが大事だ」
 まずは子達が言った。
「この国をどうするか」
「それが問題であるが」
「卿達はどう考えるか」
「この国は広過ぎます」
 諸侯の一人が彼等に合わせて言った。
「ですから」
「それでだな」
「我等がそれぞれ封じられている領土ごとにだな」
「国を分けるべきというのだな」
「はい、王がおられてこそです」
 シャルルマーニュ、彼がというのだ。
「この国は治まっていました」
「ローマ帝国となったのも王なればこそでした」
 別の諸侯も言った、彼等にとって王はまだ彼だった。
 しかしだ、その王も今からだった。
「しかし王はおられなくなれば」
「もう崩御されました」
「ですから今のこの国は治められませんな」
「それでは」
「その通りです」
 この諸侯は他の諸侯達にも答えた。
「王がおられずしかも治める仕組みもないのですから」
「今のこの国を」
「それだけの仕組みは」
「ですから」
 それ故にというのだ。
「ここはです」
「分けるべきですな」
「それがよいというのですな」
「王がご高齢なので」
「はい」
 その通りという返事だった。
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