全ての球児たちのため
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バシッ
そんな音が聞こえてくるかのようだった。逆転に湧く全ての観客たちの動きが一瞬止まるほどの豪速球。打者も思わず苦笑いしていたが、次のボールがまたしてもど真ん中に決まり、顔をひきつらせる。
そして・・・
『三振!!佐藤まず一人目を・・・あーっと!?』
3ボールからの三球三振。それに興奮していた実況が絶叫した。
『信じられない!!一つのボール球も許されぬこの場面で、佐藤甲子園最速となる159kmを叩き出したぁ!!』
スピード表示に映し出された信じられない球速。この前日の試合までの佐藤の最速は151kmだったため、突然の球速アップに会場は言葉を失っていた。
「この当時の甲子園最速は157km。佐藤さんはこの危機的状況で、それを上回る速度を計測したのです」
凄すぎるその力に言葉を失っていると、画面の師匠がホームの前に立ち、何かを叫んでいるように見える。声援の大きい甲子園では、それが何を言っているのか観客たちも聞き取れないが、打者が明らかに苛立っている様子。
「今の、なんて言ったの?」
「後のインタビューで話してたけど、『孔明!!ここから全部ど真ん中のストレートで勝負するぞ!!』って言ったそうよ」
「「「「「えぇ!?」」」」」
予告ストレート。紳士的な態度を求められる高校球児が敵を挑発するようなその宣言に、声を聞き取れたものは衝撃と苛立ちを募らせた。
「実況もこのあとそのことを知るんだけど、当然見ていた人たちからの非難は大きかったわ。しかもその宣言通り、剛さんはサインも出していない」
「だけど山堂学園は一点取れば勝ち。ここはその予告を逆手に取ってスクイズを試みたんです」
花陽の説明通りランナーはスタートを切り、バッターはバントの構え。投球は宣言通りのストレート。だが、打者はそのボールのスピードに空振りしてしまった。
その結果三塁ランナーは憤死。あらかじめスタートを切っていたためそれぞれ後続ランナーは進塁したが、2アウト。しかもそのあとの投球がまたすごかった。
『またストレート!!あぁっ!!ここでなんと161km!!日本人最速に並んだぁ!!』
プロ野球選手が持っていた最速記録に並ぶ豪速球。その次の投球も160km。高校生離れしたその球速に、立ち向きできるはずもなく三振。ノーアウト満塁、サヨナラのピンチを脱した。
「なんてピッチャーなの・・・」
「あんな場面で登板して見事に抑えて見せました」
「・・・」
タメ息とヤジが乱れ飛ぶ完全アウェイ空間。にも関わらず、円陣が解けた東日本学園の選手はそれを気にする様子など微塵もない。それどころか、選手たちの目付きが明らかに変わっていた。
「剛っちの目、なんか怖くない?」
「なんか怒ってるみたいニャ」
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