全ての球児たちのため
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のサインを受け取りモーションに入った投手。彼が放ったボールは、あろうことか打者のユニフォームを掠めてしまった。
「え?今のもデッドボールなの!?」
「体の一部に擦るだけでも打者は出塁することができるわ」
「わざとユニフォームをダボダボにして当たる面積を増やすとこもあるっていうしね」
ただ、山堂学園はもちろんそんなことはしていない。しかも剛が要求したのは見た感じ外角への球。それが逆球になったこともあり、彼は急いでマウンドへと駆けていった。
「ちょっとボールが抜けちゃったんだよね」
「そうですね。硬式ボールは滑るような気がしますし・・・」
自分たちが野球をしてきた経験からそう話していたことりと海未。バッテリーの打ち合わせが終わりポジションについた直後の初球、高めに浮いた変化球が外野の頭を越えていった。
「一点返っちゃったニャ!!」
「あのピッチャーさっきまでと別人みたいじゃない!!」
ここまで好投を続けてきたはずの綺羅が突然乱れ、その後も四球とヒットで一点を返されなおもノーアウト二、三塁。そこで東日本学園はたまらず背番号11を投入した。
「後日談だけど、この時の綺羅さんは突然疲労が来たと語っていたわ」
「無理もないよね。この日は35度の真夏日だった上に初めての甲子園。相手は強豪山堂学園だもん。どれだけ神経を磨り減らしながら投げてきたのか、検討も付かないよ」
さらにマウンドはさらに暑さを感じると言われている。ただでさえプレッシャーで疲労が増す中での初登板。むしろ彼は十分に役割を果たしたと言える。
「続く三年生投手亀井さんが一点を失ったもののなんとか凌いでこの回は三点に収めたわ。でも、ここから東日本学園はどんどん歯車が狂っていくの」
先程まで機能していたはずの打線が繋がらなくなり、得点を奪えなくなる。逆に山堂学園は徐々に追い上げていき、九回表修了時点で8対6。その差はわずかに二点。
「東日本学園の三人目、三年生の水谷さんはこの二点を守ろうと力投しますがそれが裏目になったの。力んで球が上擦り四球とヒットでついに同点!!しかもノーアウトで満塁の大ピンチ」
三塁ランナーが生還したその瞬間、最大八点差もあった試合で逆転負けになる。会場中が異様な雰囲気に包まれる中、打席に立つのは四番でキャプテン、正捕手の斉藤。
その初球はアウトコースへのストレート。しかし、際どいこのボールがボールに判定される。
「今のストライクじゃないの!?」
「絶対入ってたよね!?」
凛と穂乃果がその判定に疑問を呈する。バッテリーもその判定に不満げな様子なのが画面から見てもわかる。
「この理由も簡単よ。見てみなさい、観客たちを」
選手たちを見届ける観客たち。その人物たちの様子がおかしいのは少し前か
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