巻ノ百一 錫杖の冴えその六
[8]前話 [2]次話
「わかったな」
「はい、それでは」
「今は修行じゃ」
「それでは」
幸村も頷き清海と共に修行に励んだ、そうして熱心に汗をかき続け夜は学問に励んだ。今は確かに潜んでいるが。
すべきことはしていた、そしてだった。
清海は遂に免許皆伝となった、そこで後藤に言われた。
「ではな」
「はい、これからも」
「励みじゃ」
修行、それにだ。
「そのうえでな」
「より、ですな」
「強くなることじゃ」
そうあるべきだというのだ。
「よいな」
「承知しております」
清海もこう答えた。
「拙僧は死ぬまでです」
「修行を続けるか」
「そうします」
強い言葉での返事だった。
「殿と共に」
「そうじゃ、悟ってもじゃな」
後藤は清海が僧でもあることから仏門の話もした。
「それで終わりではないな」
「そこから先もありと聞いておりまする」
「だからか」
「はい、拙僧もです」
まさにというのだ。
「これからもです」
「修行に励むな」
「免許皆伝となりましたが」
それでもというのだ。
「そうしていきまする」
「その意気じゃ」
後藤もその意気をよしとした。
「ではな」
「はい、日々錫杖を振り」
彼しか振れないそれをだ。
「忍術も法力もです」
「どちらもじゃな」
「励みまする」
「それでよい、しかし法力は」
「そちらですか」
「御主は」
「ははは、実は弟もそうですが」
清海は僧侶としてのそれについては笑って言った。
「術としてはともかく」
「悟りはか」
「全くです」
まさにそれはというのだ。
「至れていませぬ」
「そうであるか」
「いや、全く」
「悟りはか」
「拙僧も弟もそちらは縁がないやもです」
「僧としてよりもじゃな」
「はい、忍として武芸者として」
この二つの立場でというのだ。
「励んでいまして」
「だからじゃな」
「はい、ですから」
それでというのだ。
「僧侶としては」
「やはりそうか」
「しかしです」
それでもとだ、彼はこう言ったのだった。
「何時かは」
「左様か」
「はい、そうも思っています」
僧侶であるからこそというのだ。
「まあそれよりもです」
「やはり真田殿とか」
「共にいたいです」
悟りを開くよりもというのだ。
「悟りを開き殿と共に同じ場所で同じ時に死ぬなぞ難しいです」
そこまで津國よく出来ないだろうというのだ。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ