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渦巻く滄海 紅き空 【下】
三 瓦解
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うように進むサソリの傍ら、デイダラは胸元から笠を取り出す。
鈴が連なる笠を目深に被れば、鈴の美妙な音色が鳴り響いた。


けれども、その美しく澄んだ音は、捕らわれた我愛羅を癒す事も、ましてや耳に届く事など無かった。
そして、我愛羅の兄――カンクロウの叫びでさえも。


砂隠れの里を守る為に力を使い果たした我愛羅には、聞こえなかった。
























鼻孔をくすぐる美味しそうな匂い。
暖簾を潜れば、自室に籠っていた澱んだ空気など比べ物にならぬ、香しい湯気が顔にぶつかった。


快活に挨拶すれば、里の人間にしては珍しく幼少期からナルと親しくしてくれた豪快な主人が笑顔で迎えた。
随分会わなかったが、ナルにすぐ気づいたテウチとその娘のアヤメは、にこやかに彼女の帰郷を喜んでくれる。

帰還祝いに奢ってやると豪語するテウチの言葉を遮って「俺に奢らせてくれ」と暖簾の向こうから懐かしい声がナルの背中にかけられた。笑顔だったナルが益々喜色満面になる。
アカデミーの教師であり、自分の存在を認めてくれた初めての相手であるイルカに、ナルは歓喜の声を上げた。


修行でまた一回り大きくなったナルを、イルカは眩しげに見つめる。
ラーメンを嬉しそうに食べる姿は子どもの頃と変わらないので、若干安心しつつも、かつての教え子の成長をイルカは心の底から喜んだ。反面、夢にまで見たラーメンを口に出来たナルの笑顔が曇る。


「不満があるってばよ」と唐突に言うナルに、ラーメンの味に不満があるのか、とテウチがつっかかった。店主の剣幕に、ラーメンに不満があるわけではない、とナルは慌てて弁解する。

いつになく落ち込んだ様子に言葉の先を促せば、今度ラーメンをイルカに奢ってもらうのは中忍になれた祝いだと思っていた、とナルは胸の内を明かした。
同期の皆は中忍になったのに自分だけまだ下忍のままだと劣等感を抱くナルに、イルカが慰めの言葉をかけるも、「…それとさ」と彼女は話し続ける。


「お世話になった相手との、ラーメン一緒に食べに行くって約束も果たせてねぇし…一楽のラーメン最高だから食べてもらいたいのにさぁ」

【口寄せの術】の助言や見舞いの花々をくれたうずまきナルトを思い浮かんだナルが溜息をつけば、テウチは「なんだ、そんなことかい」と豪快に笑った。


「それじゃ、約束の友達とやらが一緒に来た時に、二人まとめて奢ってやるよ」
「ほんとっ、おっちゃん!?」
「男に二言はねぇ!!うちは千年後だって美味いラーメン作ってるからな!」

大げさに語るテウチをアヤメが恥ずかしそうに小突いたが、ナルは喜び勇んで思わず立ち上がった。奢ると言ったのにもかかわらず、イルカに先
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