三 瓦解
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砂漠の一角で、閃光が奔った。
爆発音。白煙。強烈な輝き。
砂嵐よりも激しい耳鳴りがする。
砂隠れの里全体を覆っていた砂の天蓋。最後の力を振り絞って里外へ運ばれたソレが轟音を立てて砂漠に落下する。
砂海が波打つのと、我愛羅がガクリと項垂れるのはほぼ同時だった。
「自らを犠牲にして里を守ったか…流石は風影だな、うん」
失った左腕の袖が靡く。
赤い雲模様が、闇夜に嗤った。
「たっだーいま!だってばよ」
快活な声を上げ、久方ぶりの我が家のドアを開ける。
途端、むわっと埃臭い匂いが鼻について、波風ナルは顔を顰めた。三和土で靴を脱いで足を踏み入れれば、ハッキリ足跡がついて、苦笑を零す。
「長いこと空けてたから、流石に埃だらけだってばよぉ…」
埃で覆われる廊下に足跡を点々と残し、寝室に向かうその前に、ナルは山中いのに預かってもらっていた五つの鉢植えをベランダに置く。
うずまきナルトから見舞いの品として貰った花々を種類ごとに分けて植え替えた八つの鉢。
陽当たりの良い場所へ下ろせば、埃だらけの部屋がようやく彩りを得た。綱手を捜す旅に出て以来忙しいナルに代わって、いのに世話してもらっていた花々はイキイキとしている。
残り三つの鉢植えはヒナタが預かってくれているようなので、後でお礼と取りに行かなきゃ、とナルは思った。
何も無い殺風景な室内で唯一あたたかみを感じられる花々に、心が落ち着く。
家を空ける間、換気や部屋の掃除をしようか、と名乗り出てくれた同期は多かったが、ナルは遠慮して断った。
申し訳ないという気持ちの反面、自分のテリトリーに他者を寄せ付けたくないという無意識な拒絶が働いていたのだ。
里の大人から散々受けた待遇や忌避された幼少期の経験は、そう簡単にナルの心の領域を他人に侵させない。
そういった自分の中の感情を自覚しないまま、窓を開けて寝室内に蔓延る澱んだ空気を逃がす。
清潔とは言い難いベッドに腰掛け、傍らの机上の写真を手に取った。案の定、埃で曇ったソレを、汚れるのも構わず手で丁寧に拭う。
「…サスケ…サクラちゃん…」
スリ―マンセルで構成される班の中、自分を残して里抜けしてしまった写真の二人。
うちはサスケと春野サクラの顔をまじまじと見つめ、「帰ってきたってばよ…」とナルは己の胸中の想いを言葉にする。胸の煙は埃に塗れた室内で形無き火となって立ち上った。
写真のように曇る事無く、いつまでも清いままのナルの決意。
「…―――連れ戻す為に」
「
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