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真田十勇士
巻ノ百 後藤又兵衛その十五
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「ですから」
「それでか」
「それに学問もなければ」
「戦では満足に戦えぬ」
「父上や兄上程ではありませぬが政のこともありますし」
 今はそれとは無縁だが大名の子としてそれに携わってきた頃はというのだ。
「ですから」
「今もか」
「読んでおりまする」
 そうしているというのだ。
「日々」
「わしもそれなりに読んできたが」 
 それでもとだ、後藤は幸村に言った。
「貴殿には遥かに及ばぬ」
「そこまで言われますか」
「実際のことじゃからな」
 だからだというのだ。
「そう思う」
「左様ですか」
「文武両道じゃな」
 幸村こそまさにというのだ。
「貴殿は」
「ではそう言われますと」
「余計にか」
「奮起しました」
 そうなったとだ、幸村は後藤に微笑んで答えた。
「まさに」
「では今宵もか」
「はい、酒は飲みましたが」
 しかしというのだ。
「読みまする」
「読まぬ日はないか」
「まあ一日のうちには必ず」
 読む時があるというのだ。
「そうしております」
「そうか、酒を飲んでも学問は忘れぬか」
「はい」
 その通りだというのだ。
「そうしております」
「わかった、では今宵もな」
「そう致します」
 こう言うのだった、飲みながらも。
 そして実際に幸村は飲んだ後でも学問に励んだ、そして翌朝起きるとすぐに修行に入る。そうした彼を見て清海は言った。
「拙僧は学問は苦手故」
「拙者の様にはというか」
「出来ませぬな、修行だけです」
 日々の学問は出来ぬというのだ。
「そこはどうしてもですな」
「いやいや、せねばならんというものではない」
「学問は」
「己の得意とすることをしてじゃ」
 そしてというのだ。
「磨くのがよいのじゃ」
「自分自身を」
「そうじゃ」
 こう清海に言うのだった。
「だから御主もな」
「修行にですか」
「励めばよい」
「今の棒術をですか」
「そして忍術もじゃ」
 それもというのだ。
「それでよいのじゃ」
「殿の様に学問までせずとも」
「字は読めた方がよいが御主位の学があればな」
「よいですか」
「それなりに経も読めよう」
「まあこれでも坊主ですし」
 実は法力も備えている、伊佐もこちらも備えている。
「自信はあります」
「そうじゃな、ではその法力も使いな」
「やっていけばいいですか」
「うむ」
 そうだというのだ。
「だから拙者について思わずな」
「拙僧の修行をですか」
「励め、よいな」
「わかり申した、では今日も」
「修行に励むな」
「そうします」
 確かな笑みでだ、清海が応えてだ。そしてだった。
 彼はこの日も駆け回り棒を振り後藤の修行を受けた、そうして免許皆伝をひたすら目指すのだった。

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