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魔法少女リリカルなのは 〜最強のお人好しと黒き羽〜
第三十三話 少女たちの挑戦
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…といった理由なのは容易に想像できる。

 元々フェイトの母は厳しい人だ。

 今よりもっと幼かった頃にしか笑みを見せたことはなく、気づけばもう何年も母親の笑顔を見ていない。

 怒り、嘲笑、見下したり、呪うような目で睨みつけたり。

 フェイトに向けられてきたそれは、とても世間一般の母親が娘に向けるそれとは程遠いものだった。

 だからフェイト自身、母の味方をしつつも、なんだかんだで分かっていた。

(母さんは私のこと、嫌いなんだよね)

 自分は母に大事にされていない。

 分かっていた。

 そんなこと、ずっと分かっていた。

 だけど、それでも……あの人は自分を産んでくれた人で、育ててくれた人の一人で、笑顔をくれた人でもあった。

 どれだけ嫌われようと、呪われようと、それこそ殺意を向けられようとも、『自分を産んでくれた母親』と言う事実があるだけで頑張ろうと思えた。

 フェイトが母親を嫌うことなんて出来なかった。

 フェイトが母親を裏切ることなんて出来なかった。

 例えこの身体が滅びて、母親が悲しまなかったとしても――――母親を愛していた。

 そんな母親から向けられた明確な殺意。

 迫る雷をまともに受ければ、きっとただでは済まないだろう。

 そしてそれは、母親からのメッセージ。

(私はもう、いらないってことだよね……)

 ネガティブな考えなのだろうか?

 いや、どれだけポジティブに捉えようと努力しても、眼前に迫る雷は嘘にはならない。

 あれが都合よく自分にだけ当たらない軌道だったらまだポジティブに考えられたかもしれない。

 だけどあれは……どうみても、最初から自分も狙いの中に含まれて放たれた雷だ。

 ならばどれだけ考えても、出てくる答えは変わらない。

「母さん……」

 小さく、言葉が漏れる。

 同時に、涙が流れる。

 絶望の色で視界が染まる。

 これまでしてきた全てがたった一撃で否定されるのを実感した。
 
 どんな手段でも構わない。

 母親の願いを叶えれば、母は笑顔になって、自分のことを好きになってくれるのだと思った。

 そう、思おうとして必死に生きて、色んな人を利用して、裏切ってきた。

「黒……鐘」

 その中で特に心を痛めたのは、小伊坂 黒鐘を裏切ってしまったこと。

 彼を傷つけてしまった。

 それがなぜか、こんなにも胸を締め付けて激痛を走らせる。

 後悔と懺悔の気持ちで頭がいっぱいだった。

 それでも、全ては母親のためにと割り切ろうとしていたのだ。

 だが、結果はご覧のとおり。

(私はなんのために、あの人を傷つけたの……私は……)


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