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魔界転生~リターン・オブ・ゲヘナ~
02 異端十字
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え、会社の頂点に立つ者はすべての社員に目を向けておく必要がありますからね」
 会社勤めのスーツとは違う白のニットベスト、ラフな姿の清里は薄ら笑いの顔を近づける。
この男に何もかもを奪われたというのに、中年男は生きる柳は会社勤めを続けざる得ない。
目を合わせる事を本能的に拒んでしまう。
 過去に会社の付き合いで陵角と何度か顔を合わせていたが、第一印象からして不気味なジジイでいけ好かない印象しかなかった。
 神社の神職のような着物を着て、都心のビルではなく竹林の奥、離れの釣殿に佇んでいた影。
京都出身で地元に根深く密接に生きてきた人徳者だと聞いてはいたが、人徳で会社を乗っ取った上で、その息子である自分を一週間に一度は蔑すみにくる。
 今日はどんな嫌味を言いに来たのか。
手に持った竹刀を片しながら、目を合わそうとしない背中は立ち止まる。
「一度聞きたかったんですけどね、よろしいですか会長」
 返事はない、陵角の不気味さは言葉などなくても理解しているという空気を作るところ。
チスクで止まった足音に「了解」を得たとかってに決め柳は続けた。
「なんで俺を会社に残したんですか? 飼い殺しのうえに見せしめにしたいってのはなんとなくわかりますけどね。だったらデスクワークか営業やらせた方が効果的だと思うんですよ、なんでこんな場所で剣術指南なんかさせるんですか?」
 不思議なものだった。
会社乗っ取りの鮮やかな手際とは別に、乗っ取られた柳一族の処遇は天と地ほどの「区別」がされていた。
 死んだ父の妻、柳の母はまだ存命だ。
夫の会社を奪った男の処遇は実にゆるいものだった。
株主として席を残し、静岡にある別荘住まいを許し、妹たちが海外の大学に通う費用までも面倒をみていた。
 なのに一生にだけ不遇を与えた。
最初はそれが「人質」的区別なのだと考えていたが、それもまたおかしなものだった。
家族を守るために不遇を与え、辛辣さを耐えきれねば一族を失墜させるような事はしない。
 かつての社長子息である自分を辱めようとはしない。
営業をやらせ、昔顎で使っていた課長たちに頭をファイルで殴られるような日常を与える事も出きたはず。
デスクワークで鬼のような残業を押し付け、社長子息時代を嫌味のように聞かされる部署にも行かせる事も出きたはず。
お茶汲みを頼み、自分に色目を使っていた事務職の女たちの前で、逆にお茶汲みをさせるような真似さえさせなかった
ただこの道場で、御陵財閥と名を変えた会社の道場守をさせるのだ。
 陵角は不気味すぎた。
「私は適材適所という言葉が好きです。会社運営をしていく上で営業というパズルに空きがないのが理想と考えています。柳くんにとって武道は社会人をやりながらでもやりたかった……大切なものなのでは? 君と言うパズルを構成する大切な
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