初めての海
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「ハートネットは一緒に行かないのですか?」
宿にてセフィリアがトレインにそう尋ねる。一同は現在宿に戻ってきていた。戻るや否や、すぐに身支度を済ませて宿を先に出ようとするトレインとスヴェンの姿をセフィリアに見られてしまったのだ。セフィリアは5人で行動するものだと思っていたのだ。
「セフィ姐と一緒にいるとクロノスの目に入りやすくなっちまうだろ? 追っ手差し向けられると面倒だからさ」
「そうですか、てっきり私を避けているものだと思っていましたよ?」
「そ、そんな訳ねえだろー」
「ふふ、どこを向いているのですか、ハートネット。私はこちらですよ?」
笑顔のセフィリアだったが、トレインにはそれが逆に恐ろしく見えてしまっていた。「クライストを失った私はか弱い女に過ぎません」というセフィリアだが、か弱い女がこのような威圧感は出せないだろう。
そこに光太郎が戻ってきた。
「部屋をもう1つ取ってきましたよ。流石にセフィリアさんと同室にする訳にはいかないので、俺は1人で寝るからイヴはセフィリアさんと同じ部屋で休んでくれ」
「え…?」
双方修羅場になっている光景を見て、ただひとり何の被害も被っていないスヴェンは胸を撫で下ろした。
トレインたちがルーベックシティーを出てから、3人は同じ部屋に集まっていた。しかし光太郎がイヴの懇願に負けて同室になった訳ではない。セフィリアが一度クロノス上層部に連絡を取ると言ってきたのだ。勧誘のための任務継続の許可を得たいというセフィリアは、未だクロノスに縛られている。しかしこの状況から多少の綻びは見られているのだろう。いつか「クロノスのため」ではなく「自分自身のため」に生きてくれるよう光太郎は願うばかりだ。
上層部への連絡を了承した光太郎は、てっきり電話をかけるものと思っていた。しかしその予想に反してセフィリアはノートパソコンを取り出した。
「何ですか、これ」
「ノートパソコンですが…」
「のーと…パソコン? これがパソコンなんですか!?」
驚いた光太郎はセフィリアが出したノートパソコンを触る。薄く、光太郎の知っているパソコンに比べてやたら軽い。転生前はどうなのか覚えていないが、光太郎の記憶の中にあるパソコンはもっと大きく、持ち運びには適さない物だった。確かにあの世界にもノートパソコンはあった気がする。
『DynaBook J-3100SS』というのが記憶の中にある一番新しいパソコンだった。どうやらこちらの世界の方がコンピュータは一手先をいっているようだ。
パソコンを立ち上げたセフィリア。デスクトップ画面にも色がついていることに感動している光太郎に、イヴは思わず微笑んでしまった。まるで子どもみたいだったのだ。
「光太郎は、パソコ
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