少女に自由と幸せを
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「い、イヴ、お腹でも痛いのかい? り、り、り、リンスさん、早く病院に連れて行かないと!」
「落ち着きなさい! イヴちゃんは普通の病院じゃダメ…って、そうじゃない!」
そうだ、リンスさんの言う通り。こういう時こそ落ち着かなければならない。
「イヴ、どこか痛いところはあるかい?」
「…ここ」
イヴはそう言って胸を抑える。
「心臓か! リンスさん、やっぱり病院にー」
「わたしは…こうたろうと一緒がいい…」
慌てる俺の傍でイヴがそうぽつりと呟く。その小さな声が聞こえ、俺はイヴをじっと見つめる。
「こうたろうは…わたしと一緒はいや?」
「そんなことないよ。ただ、俺と一緒だと苦労させてしまうだろうし、楽しいことも少ないと思うんだ。もっと幸せな家族の元なら、美味しい物も食べれるし、おしゃれもできる。学校に行けば同年代の友達だってできるんだぞ?」
しかしイヴは首を振ってそれを拒否する。
「それよりこうたろうと一緒にいたい」
「で、でも…」
「いや。こうたろうはわたしを自由にするっていった。わたし…すきなことしたい」
イヴは全く引く姿勢を見せない。その姿勢に俺は思わず返す言葉が無くなってしまった。その俺たちのやり取りに、リンスさんは「イヴちゃんその調子! 押しの一手よ」と妙なアドバイスをしているし、トレインはやけに嬉しそうな表情でミルクを飲み干していた。スヴェンだけがやや諦めた体でタバコを吹かしている。
結局、俺にイヴの決意を諦めさせることはできず、同行を許可せざるを得なかった。俺がそう認めた瞬間、イヴは嬉しそうに抱きついてきた。
リンスさんはトレインたちとはトルネオの件のみの同盟だったらしく、新しい仕事がある、と去っていった。
「いいこと? イヴちゃんを悲しませないこと! あと分かってるとは思うけど、手を出すんじゃないわよ?」
最後にそう言い残していたが、どういう意味だろうか。要領を得ず、手を出してイヴの頭にポンッと乗せてみる。…何だか違う気がする。
トレインとスヴェンは今回仕事にならなかったため、新しい仕事を探すらしい。またいつか会えるといいな。
俺は現在イヴを後ろに乗せ、バイクで次の街に向かっているところだ。いつかは日本にも行ってみたいが、今はイヴにいろいろな物を見せてやりたい。生まれてきて良かったと、思ってもらいたいのだ。
「きもちいいね」
「だろ? 俺の自慢の愛車さ」
体を切る風が心地よく吹いていた。
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