少女に自由と幸せを
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であったが、こうして話してみるとなかなかの優しさをもつ人物で助かった。しかしスヴェンは厳しい表情を崩さない。
「それで、お前はあの子をこれからどうする気だ? 作られた存在であるあの子には身よりもなければ帰る場所もない。帰る場所はお前が奪ってしまったからな。掃除屋なんて危ない仕事をしている身で、あんな子供を連れて歩く気か?」
スヴェンは本当に優しい人だ。イヴを生体兵器としてではなく、ひとりの女の子として扱ってくれている。それが嬉しかった。もちろん、自分もスヴェンの言う通り、わざわざあの子を危険な目に合わせるつもりはない。この世界にも日本(外国からはジパングという呼び名らしい)が存在していた。危険な銃が蔓延っている国々よりは、日本の方が安全と思えるのは自分が日本人だからだろうか。光太郎としての記憶の中に残る人々。それがこの世界の人であるのか分からないが、優しい人たちがいる。喫茶店キャピトラのマスターや佐原夫妻のように・・・。そのような人に預けることができれば、イヴも幸せに暮らせるのではないかと考えている。
だがトレインの考えは違うらしい。
「別に一緒に連れていきゃーいいじゃねぇか」
「しかし俺はあの子に幸せになってもらいたいんだ。それに俺と一緒にいたいなんて思う訳ないさ。子供は子供らしく、安全な場所にいるのが一番さ」
「それもあのお姫さまがどうしたいか、だな。光太郎はあのお姫さまを『自由』にしてやった。それを選ぶのも自由になったお姫さま次第だぜ?」
トレインがそう言うと、ちょうど買い物を終えた二人が帰ってきた。
「た、ただいま…」
イヴはそう言って俺の元に駆け寄ってきた。そのイヴの姿は午前中の黒一色の服とは違い、年相応の可愛らしいおしゃれな服に変わっていた。
「おー、可愛いじゃないか! とっても似合っているよ。その服どうしたんだい?」
「リンスが…かってくれた」
イヴは僅かながら嬉しそうな表情を浮かべている。
うんうん、やっぱり女の子はこういうおしゃれができると嬉しいものなんだ。
「リンスさん、ありがとうございます。代金、いくらくらいですか? 支払いますよ」
「別に構わないわ。トルネオの屋敷からしっかりくすねてきたもの?」
そう言って胸元を開けるリンス。そこには大量の紙幣が入っていた。俺は思わず目を伏せるが、トレインとスヴェンは「ずるい」と文句を言っていた。
「イヴ、これから俺はキミの家族になってくれる人を探そうと思ってるんだ。俺はジパングで探すつもりだったけど、イヴが住んでみたい場所とかあるかい?」
「ちょ、ちょっとあんたー」
俺がイヴにそう尋ねていると、突然リンスが割って入ってきた。
急に何事かと思ったが、イヴの表情が崩れているのに気付いた
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