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魔界転生~リターン・オブ・ゲヘナ~
01 夏の午後
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正式名称の立ち上げられず仮称だけがある事件、この夏東京都内で多数の区民が行方不明になっていた。
とはいえ東京で人がいなくなる、失踪するというのは珍しいことではない。
 大都会だ、様々ら理由を抱いてこの町にくる者は年間10万を下らない。
流入激しいこの町の中で一人や二人の人間が姿を消しても大した問題にはならないのだが、ここ数週間の中で起こっている失踪は不可思議なものだった。
 失踪する人間に特定の層はなく、老若男女区別なく消えていること。
数日または数ヶ月して帰ってくるということ。
 事件として対策本部が立たないのはそのせいだ、失踪はするが帰ってくる。
共通点はただ1つ、将門塚に家族が参勤しなければ失踪した人が帰ってこないという点だ。


「あー、だからこうして見張っているんですか、少しは捜査員らしいとこみせたくて」
 柳は手早く新しいタバコに火をつけて聞いた。
目の前の社を見るここは警視庁からは少々離れた場所、柳の問いに堂本は薄ら笑いを浮かべて頭を掻く。
その考えはなかったという笑みで。
「いやー違いますよ。全然違いますって、ちょっとした息抜きですよ。本店の空気って硬いって感じでいずらいでしょ、それに柳さんの道場に通うのは警視総監の推奨ですし」
 出世の手助けはしてくれないが、親父は警視総監に近い実力者。
堂本はお気軽な兄ちゃんだが父親の威光を考えるに、捜査課に居座られるのは気分がよくない。
ある意味爪弾き者の堂本にとって出城の剣道場は避暑地でもある。
彼の立場を理解しつつも、深入りしないように距離のある返事をする柳。
「また本店とか言って怒られますよ。それに来たのなら修練しましょうよ」
「痛いのは嫌いなんですよ」
「痛いを越えないと強くなれませんよ」
「今時剣道強くたって使い道ないじゃないですか。叩き合いで解決するのは野蛮人だって世の中そう言ってますよ」
 全くそうだが、剣道に柔道は体の鍛錬の向こうに心を鍛えるという名目がある。
「まあそうですけどねぇ、こういうのは説明しても無理ですよね」
 柳は煙まみれながら答える。
ここは本庁からは離れている、離れた場所にある警視庁の道場だ。
 正確には他流試合を基本とする交流道場。
警視庁内部に道場はあるのだがわざわざここにもう一つの道場を持っているのは、多様化する犯罪に向き合う心を鍛える交流場として「柳生新陰流」本伝の柳に指南しているから。
「柳さんだってせっかく総監指定道場にしてもらっているのに練習してないじゃないですか」
「一緒ですよ、剣道なんて学んでもどこで使うわけでもないっていう……」
 若者に言われるまでもない、今時剣道で心が鍛えられるなんて言っても説得力ない。
ましてや暴力反対が色濃くなった世の中だ、警察が犯人を刺股で取り押さえようと
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