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魔界転生~リターン・オブ・ゲヘナ~
01 夏の午後
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いう効能があるんですか?」
「効能って……石碑じゃなくて、あそこにあるカエルの置物にそういう願掛けしてるんですよ。置物あったでしょう、あれに無事帰るってね」
「えー、あのいっぱい置いてあるカエルってそういう意味があったの?」
「堂本さん……仮にも捜査一課の捜査員になった人がそんなに物知らずで良いんですか?」
 間抜け面、今年捜査一課に配属された堂本は一課のお味噌ちゃんだ。
父親が警視庁上層部に籍を置くボンボンだが、頼みの父は出世に手を貸してくれる事は一切なく本人もノンキャリ、一課在籍の「肩書き」が欲しかっただけと言う今時の若造
「自分物知りになるつもりはないですし、出世とも無縁ですから、どーだっていいですよ」
「どうだって……まだ若いのに」
「若いだけですよ。高校出てから行くとこなくってブラブラしてたところをオヤジに拾われて警察官にはなっただけ。野良犬なんですよ、人生ここどまりでも上出来ですよ」
 柳から見て1回り年下の堂本は当年とって28歳、30近い男がこんな状態で大丈夫なのかと本心から心配になり額にシワが寄る。
柳の怪訝な顔に気がつくと、テレと若輩の浅学を隠すように言い返した。
「あっあのですね、知ってますよあそこがどういう場所なのかは。あれは平将門さんの墓ですよね、なんでカエルの置物があるかとかは知らないだけですよ」
 言い訳も苦しい堂本についタバコを吹いて苦笑いして手を挙げる。
まるで急に暴れ出した馬をなだめるような仕草で。
「まっまっ、墓ってわけじゃないですけど、そうですね。関東で討ち取られた将門さん首が京都の獄門から飛んで戻ったっていう伝承から、帰ってくる。因んでカエルの置物があるわけですよ」
 眼下の社。
社(もり)というには小さな土地、だが回りを囲む真新しくも未来的なビルを見るにみすぼらしい場所に人々は通い詰めていた。
 将門塚(しょうもんづか)。
平安時代中期、日本国を二つに割りかねない爆弾発言をした男・平将門(たいらのまさかど)。
 現在でいう千葉北部から茨城界隈を縄張りとした平氏一門の1人。
混乱極めた関八州、朝廷からの締め上げに苦しむ土豪をまとめ上げ自らを「新皇」と名乗り、時の朝廷と対立し流星の如く敗れ去った男の首がここに埋まったとされる場所。
 大手町1-2-1にあるこの場所は関東大震災以前は盛り土の墓所だったが、1926年に新たに鎮魂碑が作られ今に至る。
 東京の先進機構の中にひっそりと立つこの碑に、今多くの人が通い詰めている。
「やっぱり例の連続失踪者関係かなぁ……多いもんねぇ」
「事件になったんですか?」
「なってませんよ……でも、俺は問題だとはおもうんですけどね」
 堂本は途切れることのない列を見ながら部外者である柳に例の事件の話をしていた。
 (仮称)区民無差別誘拐事件
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