長所と短所の使い分け
[5/5]
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
べた海未だったが、彼女は穂乃果のことをよく知っている。そんな彼女の出すサインを、拒むことなどするはずがない。
(行きます!!ラブアロー・・・シュート!!)
若干厨二病なところのある海未は心の中でそんなことを思いながら、ボールを握りミット目掛けて投じる。
(甘い!!)
それは真ん中高めに甘く入って来てしまい、絵里はフルスイングでそれを捉える。打ち上げられた打球は外野の奥深くまで飛んでいき・・・
「オーラーイ!!」
パシッ
レフトを守っていたことりが、フェンスに片手を付けてキャッチした。
「くっ・・・もうひと伸びがなかったわ」
悔しげに奥歯を噛み締める絵里。だが、作戦通りの海未と穂乃果は、マウンド上でハイタッチしていた。
「決まったね!!海未ちゃん!!」
「心臓が止まるかと思いました」
最後に投じたボールは、それまで投じられたストレートとは少し違う。通常のストレートは、バックスピンをかけた際、一回転するごとに縫い目が4ヶ所空気抵抗を受けるフォーシームが主流であり、海未が投げた最初の二球もこれに当てはまる。
だが、最後に投じたのは一回転ごとに空気抵抗を受ける縫い目が2ヶ所しかないツーシームと呼ばれるストレート。このボールはストレートよりもシュートしやすいボールであるため、ムービングボール全盛期のメジャーでよく使用されている。
最後のボールがそれまでよりも変化量が大きかったため、絵里は完璧に捉えたはずだったが、わずかに芯を外し、スタンドインしなかったのである。
「惜しかったね、お姉ちゃん」
「えぇ、でも大丈夫。次は必ず打つわ」
駆け寄ってきた妹の頭を撫で回すが、肝心の妹の表情は暗い。彼女の本心としては、姉に野球をやってもらうために、ここで負けてもらった方が気が楽だからだ。
「さて、最後はどんなピッチャーなのかし・・・ら・・・」
泣いても笑っても最後の対決となる打席。その相手がどんな投手なのかと思いマウンドを見た彼女は、言葉を失った。
「うわっ!!」
「あ!!ごめんなさい!!」
先程までの堂々とした投手たちとは全然真逆の、オドオドした眼鏡ッ娘がそこにいたからだ。
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ