暁 〜小説投稿サイト〜
北欧の鍛治術師 〜竜人の血〜
聖者の右腕W
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キーストーンゲート内部は現在、瓦礫と不快な臭いで満たされていた。突如侵入してきた2人の侵入者によって引き起こされた惨事。警備員の攻撃をものともせず虹色に輝く眷獣らしき巨体を纏った人工生命体(ホムンクルス)と法衣を着て片眼鏡(モノクル)を掛けた半月斧の巨漢。魔力を無効化する結界を持つ眷獣と底上げされた膂力によって繰り出される破壊は熾烈を極めた。キーストーンゲートのライフライン関連が全て停止し、襲撃したのは一階部分だけだというのに上層階にも被害は及んでいた。先日の古城の500億円被害でやられた人工島管理公社のサーバーシステムの復旧のためにキーストーンゲートの上層階で作業をしていた藍羽浅葱もその被害者の1人だった。
「ああもう!なんなのよいきなり??」
ビル全体が揺れたかと思えば電気が(同時に水も)止まり、エレベーターは停止。腐れ縁的な感じの人工知能からは避難を勧められる始末。約3日不眠不休で働きづめの身にこの上ない仕打ちである。
「ゼッタイ犯人に後で復讐してやる・・・」
『嬢ちゃん、この通路を抜けたら50メートル直進、右に曲がって外の非常階段に出ろ』
携帯、財布、家の鍵と私物のノートパソコンを引っ掴んで作業をしていた部屋を飛び出てこの胡散臭い人工知能の言う通りに廊下を走って早数分。普段から特に運動もしないのに距離も考えず全力疾走してきた浅葱の脚と肺は悲鳴をあげていた。
「モグワイあんたそれあってんでしょうね??」
先ほどの指令にあった非常階段のドアを開けてすぐさま階段を駆け下りる。足を踏み外さぬよう手すりを伝いながら足を動かす。
『ああ、もちろん問題ねぇぜ。襲撃者たちが何かしない限りはな。ケケッ』
「それフラグ!やめてくれない??」
『まあどんな状況も楽しむのが一番だ。例えば装備なしでスカイダイビングする事になってもな 』
ドォン!と下の方で音がする。
「ねぇ・・・?それほんとにさぁ・・・」
ビルがより一層大きく揺れる。
今いる踊り場の設置されている階の窓から支柱にヒビが入っているのが見えた。
「マジでヤバイやつだから・・・」
非常階段の設置されている外壁に下の階から徐々にピキピキッと音を立てながら亀裂が入ってくる。それが上層に達した時、非常階段が上の方からしなりながら落ちてきた。
「やめてほしいんですけどおおおぉぉぉぉっ??」
浅葱のいる踊り場も例外なく、地面に叩きつけられる方向で物理法則に従いながら順調にあの世行きへのカウントダウンを秒刻みで開始する。
「古城っ・・・!」
密かに想いを募らせる友人の名を呼ぶ。助けに来てくれないのは分かっている。そんな都合のいいことは起こらない。だがこんな死に方をするくらいなら一度でも言っておけばよかったと数秒後に物言わぬ屍になる身には今更な後悔をする。目を閉じて時が来るのを待つに徹
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