第五章 Over World
ここに、私がいるから
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「私は・・・・もうすでに何度も?・・・・・!」
「お姉ちゃんは本当に勘が鋭かったから・・・・」
しかも、一回ずつではない。
それを何周も何周もした。
少女が「彼女」と過ごしたかった、もっとしたかったことを、何度も。
叶えられなかった願いを
見ることのできなかった光景を
届くことのなかった未来を
彼女は一回の二週間のうちに一つ一つ込め、それを何度も繰り返してきた。
そして、その末に
「お姉ちゃんは、あとちょっとしか繰り返せない」
「え・・・・」
「お姉ちゃんの身体がもう、疲れ果ててダメになっちゃってるんだ・・・・・」
「そんな・・・・だってこの身体は・・・・」
自分の体を見る。
どこも限界を迎えてはいない。
傷を負っているわけでもなく、消耗して痩せてもいない。
だが、目の前の少女は首を振る。
「ここの時間と外の時間は違うから。ここは私の作った舞台の上だから」
つまり、実際の身体はすでに疲弊しているらしい。
当然と言えば当然かもしれない。
彼女がさらわれてから、どれだけの時間がたっているのか。
その間、当然食事も何もありはしないのだ。
エネルギーは与えているので、通常の飲まず食わずよりも持つ事は持つ。
しかし、それでもやはり限界は来る。
「お姉ちゃんはバリアみたいのがあって、エネルギーもうまく送れないし・・・・」
「え・・・?ばりあ?」
その言葉に、何かを思い出しそうになる。
だが、どうしても出てこない。
「でも、まだ繰り返すことは出来るよ。ねえ・・・まだいっぱい楽しもうよ・・・・」
「・・・・・ダメよ・・・・」
「ここから出ても、辛いだけだよ・・・・みんな傷つけてくるんだよ・・・・?」
「それはあの人たちだって同じじゃない・・・・」
「でもあれは最後だけだから!!みんな本当は優しいんだよ!?お姉ちゃんも知ってるでしょ?あれだけ我慢すれば、あそこでなら、何でもできるんだよ!!」
それこそ少女の望み。
あの幸せを、永遠に享受しよう。
作られた箱庭でも、そこが幸せなら、夢のような世界なら
その優しさに浸って死んでいく方が、よっぽど幸せじゃないか、と
だが
「ダメよ・・・ダメ!!そうだ・・・私には・・・・」
「忘れちゃってるのに?」
「ッ!?」
私には
その後が続かない。
何があるのか 何が待っているのか
頭に欠片も浮かんでこない。
「ここはね、あの最後以外に辛いことは何もないの。お姉ちゃんも、辛いこといっぱいあったんだよね?でも、それも忘れちゃうから」
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