第五章 Over World
ここに、私がいるから
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が投げ出されたのは、黒よりもなお黒いと言う、そんな表現しかできない空間だった。
その光景に驚く唯子だが、小さな声に振り向く。
そこにいたのは、さっきまで自分の手を握っていた少女だ。
「これは・・・どういうこと!?」
「お姉ちゃんも・・・気付いちゃったんだね・・・・」
その一言に、唯子の脳裏に様々な光景が浮かんでくる。
それだけで、何が起こっているのかを察するには十分だった。
「今までの「お姉ちゃん」は、ここまで気づくのにもっとかかったのに・・・・お姉ちゃんはすごいんだね」
「何を・・・・言っているの?」
唯子の疑問。
それに応えるかのように、少女が光って姿を変える。
それは、まさに魔法少女と呼ばれる者の姿だ。
深緑に輝くソウルジェムが、彼女の手首でキラリと光る。
そこから少女は語り出す。
ここは、世界で一番幸せな場所だと。
今まで唯子が見てきたことはすべて、この少女のかつて経験した記憶だ。
と、行っても唯子の「配役」は別だ。
この中で、彼女だけが違った。
本来の「彼女」も、あの村に流れ着いた放浪者だった。
それから二週間後にあの悲劇は起こった。
あの出来事に絶望した少女は魔女となり、その最後の希望、終わりの絶望は、ワルプルギスの夜の一部として集約されて今に至る。
ワルプルギスの夜は、魔法少女たちの怨嗟や怨念の塊だと言われている。
代々その台頭を担う少女が変わって行き、今はこの少女の代、と言うわけだ。
少女は、何度もこの時間を繰り返している。
二人の少年も、神父も、あの村人たちも、すべて彼女の記憶の中から作り出されたもの。
しかし、「彼女」だけは作り出すことが出来なかった。
一番いなきゃいけない人なのに、その「彼女」だけはどうしても手に入らない。
だから、様々な人を連れてきては「彼女」の役にあてがった。
もちろん、そんなことに耐えられる子なんているわけがない。
肉体が朽ちるか、精神が崩壊するかだ。
その前に気付く者もいたが、そう言った彼女たちはすぐに繰り返され、記憶を失う。
そうして彼女は「この舞台」を幾度も幾度も回し続けたのだ。
「でも、私は二回目で気づいたわ・・・・まさか、私の記憶をリセットして!?」
「・・・もうそれは出来ないよ」
「え?」
「お姉ちゃんが繰り返したの、二回じゃないもん」
その言葉に、彼女の脳が揺れる。
春の光景
夏の出来事
秋の風景
冬のひと時
少女が繰り返すのは「彼女」が来てからの二週間。
ならば、すべてが一回の内であるなんておかしい。
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