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最低で最高なクズ
ウィザード・トーナメント編 前編
花園の彼女
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か....ん?イザベル!?」


これは意外な切り口で話が始まった。しかも反応にすごく困る。どうやら会話のキャッチボールにおいて彼女は主導権を握ることができないタイプだ。俺も決して得意ではないが、少なくとも彼女ほど下手なわけではない。これだけは我ながら自信を持って言える。


ただ好都合なことも1つ分かった。彼女がイザベルが入院しているという事実を知っているということだ。なら俺は彼女がそれを理解した上で俺の願いに対しての答えをくれるものと思える。


「そこでなんだけどさ。」

「はい?」

「もし良ければ、イザベルの代わりに俺とウィザード・トーナメントに出場して欲しい。報酬は、可能ならお前を学園の生徒会長にする。頼めないか?」


今だけはプライドを捨てて頭を下げる。彼女がダメならもう候補は見つからないと考えてもいい。


「少しいいですか?そのことについて話したいことがありまして。」

「なんだ?」

「イザベルさんが襲われたあの日に私はイザベルと会っていたんです。この庭園で。」

「そうなのか!....その時、イザベルはどうだった?誰かに追われているような感じはしなかったか?」

「いえ、とくには.....でもその時にイザベルさんと1つの約束をしたんです。」

「約束?」


華澄は勢い良くベンチから立ち4歩ほど前に進むと、長い髪の毛がわざとなびくような唐突な振り向きのアクションを取る。この光景は以前何かのアニメで見た覚えがある。確か「除物語(のけものがたり)」だっただろうか?俺の記憶には尋常じゃないレベルの活字と独特の描写がすごく焼き付いていた。


「『もし自分の身に異常が起きれば、代わりにパートナーとしてウィザード・トーナメントに出て欲しい。』というのがイザベルさんからのお願いでした。」

「何っ!?」


それはまるで、イザベルがこの事態を予測していたかのようなそんなお願いだった。前から感が良い奴だと思っていたがこれを聞くとただ単に感が良い奴には思えなくなってしまう。まるで未来予知だ。


「ですから、アナタが私と組むのは偶然ではなく必然というわけです。驚きましたか?」

「驚くも何も.......最高じゃねぇーか!」


俺は奇声を上げるようにその言葉を放つ。普通なら偶然のように見せかけた必然に対して明らかに動揺するのだが、俺はそんなこと考えはしない。イザベルが手を回してくれてたお陰で俺には既に別にパートナーがいた。そんな都合の良い話はないだろう。


それにお前らは忘れてるのかも知れないが、俺の性格はとびっきりの「クズ」なんだぜ。

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