スラッガーと守備職人
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理由がわからずにいる面々は、不機嫌になりつつある少女の様子を観察する。
「天王寺先生って、あの天王寺剛でしょ!?なんでもっと教えてもらおうとしないのよ!!」
「へ?」
彼女の言ってる意味がわからずどんどん困惑に顔が染まっていく穂乃果たち。そんな少女たちの中で、一人だけ目を輝かせながら、にこの手を取る人物が出てくる。
「やっぱりそうですよね!?天王寺先生ってあの天王寺剛ですよね!?」
「そうでしょ!?もしかしてって思ってたけど、絶対そうよね!?」
なぜか嬉しそうに会話をしているにこと花陽の姿を見て顔を見合わせる四人。そしてしばし二人が談笑していると、何やら話が纏まったようで顔を四人に向けた。
「いいわ。にこも野球部に入ってあげる」
「ホント!?」
「えぇ。それとね、にこ、三年生だから!!その辺忘れないでよね!!」
「え・・・」
「「「「「えぇー!!??」」」」」
「全く・・・何なのよあの子。人の気も知らないで」
一方、帰路を歩く真姫は先程のにことのやり取りを思い出していた。
『野球部に入ってあげればいいのにぃ』
「私だってやれるならやりたいわよ!!」
思わず怒声を上げた後、我に返り周囲を見回す。運良く近くに人がいなかったため、彼女はホッと一息ついていた。
(私だって・・・)
小さい頃、親に連れて行ったパーティで初めてその少年に出会った。
『天王寺剛です。よろしくお願いします』
一緒に連れられていた兄と同じように頭を下げたその少年に、その時は何かを感じたわけではなかった。
年も離れていたし、ただ父の友人の息子といった感情しか持ち合わせていなかったが、ある日テレビで偶然その姿を目にした真姫は、気持ちを高鳴らせた。
『入ったぁ!!天王寺!!満塁ホームランを叩き込んだぁ!!』
塁を駆け回るその人物は、以前会った時よりも大人びていたが、彼女は見間違えることはなかった。ベンチに戻りヘルメットを脱ぐと、まさしくその少年であることを確認する。数々の伝説を残したその人物に近付きたくて、彼女は親に内緒でその姿を真似するようになった。
しかし、親は彼女が自分の跡を継ぎ、医者になることを大いに望んでいた。その気持ちを知っていた彼女は、自分の気持ちを隠し、親の期待に応えることに徹してきた。
(そう、だから私は野球をやることは絶対にないわ)
自らを納得させるため、そう呟いた真姫は顔を上げる。すると、先を歩く天王寺剛の背中が目に入った。
「剛くん・・・」
それを見た瞬間、彼女は走り出した。少女は曲がり角を曲がったところで青年に追い付くと、彼の名前を呼ぶ。
「ご・・・天王寺先生!!」
「
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