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元令嬢、冒険者になる 〜婚約破棄されたので国を捨てました〜
プロローグ
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であるこの私を投げ飛ばしたなぁ!」

しかしその空気は意識を失ったかと思われていた王子の叫びに霧散する。
どうやら下敷きになった人間がクッションになり、意識を失うことを免れたらしい。
赤くなった頬を涙目で抑えた王子の憤怒に満ちた表情に会場に緊張が走り、ラミスは憎々しげに舌打ちを漏らす。

「ちっ!殺さないように手加減して殴ったのと、気にくわない輩に密集しているところに殴り飛ばしたのが間違いでしたわ!」

「貴様ぁ!騎士団!この罪人を捕らえよ!」

ラミスの言葉に王子がブチギレて、もう引き返せない所直前まで緊張した空気が会場を覆う。

「両方そこまで!」

「っ!」

だがその空気は新たに現れた国王の言葉によって霧散した。

「ちちう、」

そして自分を散々甘やかしてきた父の登場に王子は顔を勝利の確信で輝かせて、ラミスに嘲笑を浮かべる。

「ラミス殿!どうか!」

「っ!」

ーーー だが、その顔はラミスに土下座した国王の姿にあっさりと固まることとなった。


◇◆◇


「ち、父上何故その女にそんな格好を……」

震える声で王子が国王にそう問いかける。

「この、馬鹿者が!」

「がっ!」

だが国王はその問いに答えないどころか、王子の頭を拳で殴りつけた。
そしてさらに馬乗りになり、王子を殴り続ける。

「いや、ち、父上、やめ、やめたください!」

「巫山戯るな!お前は、自分が!何をしたのか分かっているのか!」

鬼気迫る表情で我が子を殴る国王の姿に貴族達の間になんとも言えない空気が流れる。

「そんなことをしてももう遅いですわよ」

「っ!」

だが、ラミスの冷ややかな声が国王の行動を止めた。

「ラミスど、」

国王はそのラミスの様子に焦ったように口を開くが、

「言ったでしょう。ちゃんと子供を躾けろと。幾ら派手に子供を罰した所で、もう遅いですわよ。」

「っ!」

しかしラミスは国王の言葉を聞くまでもないというように遮る。

「お願いです!ラミス殿!今貴女にこの国を抜けられたら……」

だがそれでも国王はラミスに嘆願する。

「私は一度、あなた方の行いを許しました。
決してあなた方を信じた訳ではありませんが、一度だけは。

2度目はありません」

「っ!」

そしてその日、1人の令嬢が王国を去った。
そのことに危機感を覚える人間は殆どいなかったが、だがその時からゆっくりとそれでも確実にスプライム王国は破滅への道を進んで行くこととなる……
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