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戦姫絶唱シンフォギア〜貪鎖と少女と少年と〜
第六話 退かぬ意志は引き金となり
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「いくらチューンフォーカーを使いこなせても、そいつが起動しなければただ炭素となるだけだ。君が前線に出るためには、その作動を確実なものにする必要がある」
「っても、一体どうやれば……色々試してみたんだろ?」
「いいや。まだ試していないことが一つあるだろ」

 気づけば鳳は背中を向けていた。そのまま逃げ出そうと試みるも、すぐに襟首を掴まれてしまった。

「歌ってみろ」
「この間、歌ったじゃないか! 断る!」
「あんな気の抜けた発声を歌と思え、か。郷介君、君も冗談が上手いな」
「とにかく! どんな発声だろうが何だろうが歌は歌! ピクリとも反応しなかっただろ!」
「……ふむ」

 鳳の言う事もまた事実なだけに、弦十郎はそれ以上言葉を続けなかった。適合者の紡ぐ歌に対してシンフォギアシステムは反応する。どんなに微量な歌声でも、それに応じた反応を見せる。
 だが、鳳の歌にBC2形成装置は何も答えない。
 鳳自身、焦りは感じていた。
 チューンフォーカーを校舎の壁へ向け、中指の所にある引き金を引く。

「ほう」

 下段の銃身からワイヤーが飛び出す。その数瞬の後、鳳はリディアンの屋上に立っていた。
 先端部ユニットより噴き出す特殊吸着ジェルで一時接着、そしてチューンフォーカー内部に仕込まれたモーターでワイヤーを巻取ることにより、鳳は宙を駆けることが出来るのだ。
 普通ならばもっと長期間の修練を積まなければならないのだが、ずっと
リディアンの《《窓拭き》》で鍛えた超人的なバランス感覚と度胸が、短期間での立体的機動を可能としていた。

「チューンフォーカーでの動きは完璧なんだ……だけど、あとは鎧が。あの雑音共と相対しても為す術無し、だなんて言わせぬ鎧があれば……!」

 自分の悩みなどどこ吹く風とばかりに、月は明るく照らしてくる。

「……風が」

 風が心地よかった。胸が晴れるような思いと同時に、少しばかり自分で自分に驚いていた。
 今までの自分はただ何も目的もなく、ただ生きるために目の前に置かれている仕事をこなし続けていた。それが今はどうだ。
 目的がある、願いがある。
 それはどこか、贅沢なもののように感じられて。

「ん?」

 目を凝らしてみると、何だか街の一部が妙に明るい。街灯にしては些か強い光。

「まさかッ!?」

 過ぎった“もしかして”。気づけば、鳳はまた先ほどの要領でリディアンの屋上から降りていた。

「どうした郷介君!?」
「遠くで火が上がっていた! 様子を見に行ってくる!」
「待て郷介君! 俺の方にも今連絡が来た。どうやらノイズが出現したようだ。今、翼達が対応に向かう」
「だから待っていろと!? そんな事は絶対に承服しかねる!」

 言葉の代わりに、弦十郎
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