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Dragon Quest外伝 〜虹の彼方へ〜
Lv55 怒涛の羊たちの沈黙
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もの、俺達にはほとんど会話がない状況だ。
 一体何を考えているんだろうか。
(さて……今日で牢獄生活ともおさらばか……というか、このままいくと、この世とおさらばって感じだが……ン?)
 ふとそんな事を考えていると、鉄格子の扉が開く音が聞こえてきた。
 どうやら、また誰か来たようだ。
(投獄されてから面会が続くな……まぁといっても、来るのはフィオナ王女かアヴェル王子くらいだが……)
 だが、今日は少し様子が違っていた。
 なぜなら、いつもなら聞こえてくる兵士とのやりとりが、全く聞こえてこないからだ。
(変だな……話し声が聞こえない。小声で話すなんてしないだろうし……なんか妙だ)
 暫くすると、こちらに向かって歩いてくる足音が聞こえてきた。
(誰だ、一体……)
 俺は少し身構えた。
 すると程なくして、フィオナ王女とルッシラさんが牢の前に現れたのである。
 どうやらここに来たのは2人だけであった。
 ルッシラさんは何かを監視してるのか、しきりに出入り口の方向を気にしている。
 そんな中、フィオナ王女は真剣な表情で、話を切り出したのである。
「ヴァロム様、そしてコータロー様……今日は御2人の為に私は来ました」
「俺達の為? どういう意味ですか?」
 するとフィオナ王女は、俺達に鍵を見せたのである。
「ヴァロム様にコータロー様、ここから逃げてください。後は私達が上手くやっておきます」
「ちょっと、待ってくださいッ。そんな事をしたら、貴方の身に危険が降りかかますよ!」
「大丈夫です。待っていてください。今、牢の鍵を開けますから」
 フィオナ王女はそこで鍵を向かわせた。
「やめてください。貴方の身に危険が及びますッ」
「だ、大丈夫です」
 フィオナ王女は鍵を穴に差し込む。
 ここで瞑想中のヴァロムさんが口を開いた。
「コータロー! フィオナ王女を今すぐに止めるんじゃッ!」
「わかってるよッ」
 俺は格子の隙間から腕を出し、鍵を持つフィオナ王女の手首を掴んだ。
「なッ、コータローさん……どうして!?」
「いいんです……俺達の事は気にしないでください。他人を犠牲にしてまで助かろうなんて、俺とヴァロムさんは思っていない……だから、やめてください」
「で、ですがッ、このままでは……。私は、命の恩人である御2人に、生き延びてもらいたいのですッ!」
 フィオナ王女の瞳から大粒の涙が、頬を伝う。
 だが、鍵を持つ手の力は緩めなかった。
 俺はルッシラさんに助けを求めた。
「ルッシラさん……王女を止めてください。お願いです」
「し、しかし……」
 ルッシラさんは、俺とフィオナ王女を交互に見て、複雑な表情を浮かべていた。
 どうやら、本来の職務を忘れているようだ。
(チッ、仕方ない……)
 俺は大きく息を吸
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