Lv55 怒涛の羊たちの沈黙
[8/12]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
挨拶……ハッキリ言って嫌味以外の何物でもない。
俺的には嫌いなタイプの人間といえた。というか、嫌いだ。
イケメンで礼儀正しく、地位も名誉もあり、どことなく俺を見下すその仕草が、癇に障る奴であった。
「確かに、見るなら今の内ですかね。私は2日後には、贖罪の丘にて、この世からいなくなりますから」
「ハハハ、これは失敬。言い方が悪かったですね。申し訳ない。ただ……貴方を一目見たかったという事に嘘偽りはないですよ」
「俺なんか見ても、時間の無駄だと思いますけどね」
「私はね……貴方が、魔炎公ヴァロム様の最後の弟子だという事を聞いて、興味が湧いたのですよ。ヴァロム様は実子であるディオン様とアルバレス家の天才・シャール様以外、手解きした事はないのですから。ですよね? 魔炎公ヴァロム様」
レヴァンはそう言ってヴァロムさんを見た。
多分、わざとヴァロムさんが嫌う魔炎公という言葉を使ったのだろう。が、ヴァロムさんは微動だにしなかった。
「あのレヴァンさんでしたっけ……そんな言葉じゃ、ヴァロムさんは反応しませんよ。俺が何言ってもあの状態ですから。まぁそれはさておき、俺を見た感想はどうでしたかね? 面白かったですか?」
「俄然興味が湧きましたよ。貴方はこの状況においても、自分を見失っていないですからね。只者ではないとお見受けしました」
「そんな大層なモンじゃないですよ。只者じゃないのなら、こんな場所におりません。と、私は思いますがね……。つまらん、男ですよ、私は」
「私はそうは思いませんね。フフフッ」
レヴァンはそう言って爽やかな笑顔を浮かべた。
と、ここで、フィオナ王女が訊いてきた。
「あの、コータロー様……ヴァロム様はあの後、何か言っておりませんでしたか?」
「特に何も言ってないですね。ずっとあの調子です」
「そうですか……。ところで、コータロー様……この間来た時も気になっていたのですが、その額の傷は一体どうされたのですか?」
フィオナ王女はそこで、俺の額をマジマジと見た。
「額の傷? ああ、これですか。これはアズライル猊下をからかったら、癇癪を起されてね。それで出来た傷です」
「ア、アズライル猊下をからかっただと……何という事を……」
ルッシラさんはドン引きしていた。
フィオナ王女も少し引き気味であった。
「げ、猊下に、一体何をされたんですか?」
「妙な杖で壁に叩きつけられたんですよ。ピカッと光る青い杖でね」
するとレヴァンが話に入ってきた。
「それは恐らく、光の王笏だと思いますよ。アズライル猊下にしか扱えない特別な杖です」
「光の王笏?」
「魔導器製作の名家であるクレムナン家の当主、レオニス・ヴィドア・クレムナンの手によって、アズライル猊下の為に作られた杖です。貴重な魔鉱石をふんだんに使った杖で、
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ