Lv55 怒涛の羊たちの沈黙
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は丁寧にお礼を言ってやった。
「はい、感謝してますよ。ありがたい、お心遣い、痛み入ります。すぐに癇癪を起こす、気の短いアズライル猊下にも、そうお伝えください」
「この異端者め……なんと無礼な……」
フィオナ王女は名残惜しそうに言葉を発した。
「あの……また来ます。ヴァロム様……その時は、先程の問いにお答えください」
「さ、行きますぞ、フィオナ様」
神官に促され、フィオナ王女と近衛騎士は出口へと足を向けた。
俺はそこで、近衛騎士に向かい、1つだけ忠告をした。
「あ、ちょっと待った。そこのルッシラという近衛騎士の方、くれぐれも、フィオナ王女の警護は厳重にね」
近衛騎士は俺に振り向く。
「そんな事、貴殿に言われるまでもない」
「俺が言ってるのは、いつも以上にって事ですよ」
「どういう意味だ……」
「そのままの意味ですよ。お願いしますね」
「……考えておこう」
神官は忌々しそうに、俺を睨んだ。
「さ、行きますぞ。ここは穢れた場所ですからな」
そして3人は去って行ったのである。
3人が去った後、シンとした地下牢の静寂が訪れる。
俺はそこでヴァロムさんに話しかけた。
「ヴァロムさん……今の石板の話だけど、どう思う?」
「……手で触れると聞こえる石板か。そういえば……コータローも経験しておるんじゃないのか」
「ああ、例の試練の時にね……」
「もしかすると、同じようなモノかもしれぬの」
「かもね」
「そんな事より……アレを開く瞑想をしたらどうじゃ?」
アレとは魔生門を開く修行の事だろう。
処刑待ちのこの状況で、それを指示するヴァロムさんは中々の強者つわものである。
「はいはい、やりますよ」――
[U]
フィオナ王女が来た翌日、今度はアヴェル王子とウォーレンさんが牢へとやってきた。
牢の前に来た2人は、こちらを無言で見詰めていた。なんとなく2人は気まずい表情をしていた。
まぁこんな状況だ。こうなるのも仕方ないだろう。
ちなみにだが、今日のアヴェル王子は正装であった。
その姿はまるで、いつか見た映画に出てきた古代ローマ帝国の皇帝のような出で立ちである。
金の装飾で彩られた赤と白の衣を身に纏っており、まさしく王族といった佇まいだ。
また、牢の前にいるのはこの2人だけであった。神官の姿はない。向こうも色々と考えての事だろう。
(今日は神官がいないな……だが、どこかで聞いてるに違いない。猊下が許可したというこの面会……恐らく、俺やヴァロムさんから、色々と情報を聞き出すためだろう。都合の悪い芽を早めに摘み取る為に……)
重苦しい沈黙の後、まずアヴェル王子が口を開いた。
「……コータローさん、ヴァリアス将軍から話は聞きました。貴方が、ヴァロム様の最後
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