第三章
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「意外と簡単にできるぞ」
「簡単ですか」
「即座にかかれてしかも一瞬で治る」
これだけ聞けば非常に有り難いものだった。
「では今からじゃ」
「今からはじめるのですか、ここで」
「さっきも言ったが一瞬で治る」
だからだ。一瞬で治るというのだ。
「はじめるぞ。それではな」
「ここは玉座の前ですが」
「それが問題あるのか?」
この問いは逆にピョートルが面喰らうものだった。貴族の問いに首を捻って返す。
「何か」
「いえ、陛下がよいのなら」
この貴族もピョートルのがらっぱちと言っていい行動は知っていた。場所が宮殿の中であっても普通に油にまみれて大砲をその身体で学ぶ男だ。それならだった。
玉座の前で歯科の手術もするのもわかった。それでだった。
ピョートルの言葉に頷いた。ただ具体的にどうして治してくるかはわからなかった。
そのピョートルは手にあるものを出してきた。それはというと。
「?それは」
「これだけで充分だ」
ヤットコだった。それを出してきてだ。
ピョートルはすぐに貴族の口を強引に開けてその中を見た。それで虫歯を見つけると。
「これだな」
ヤットコで歯を掴みまさに一瞬だった。持ちまえの怪力で引っこ抜いてしまった。
歯はヤットコに掴まれたまま弧を描く。そうしてそこには一条の血が続く。貴族は歯を抜かれた瞬間に声にならない悲鳴をあげた。
その貴族を前にしてだ。ピョートルは満面の笑みを浮べてこう告げた。
「これで虫歯は治ったぞ」
「は、はあ・・・・・・」
「よかったな。そなたは最新式の西欧歯科技術を受けたのだ」
「あの、歯が」
「虫歯が治ったぞ」
周りの廷臣達は呆然となっている。その一瞬の出来事に。
それで言葉もないが皇帝だけが笑って言うのだった。
「他にも虫歯の者はいるか」
「い、いえ私は」
「私もです」
「虫歯なぞありませぬ」
「御安心下さい」
「いやいや、自分ではそう思っていてもだ」
どうかとだ。ピョートルは笑って言うのであった。
「既にある場合もある。虫歯は油断できん。だからだ」
「えっ、では我々も?」
「今からですか?」
「ついでだ。皆の歯を見てやろう」
玉座を降りその手にヤットコを持っている皇帝が言う。そしてだった。
自らの手で廷臣達の口を見て周り虫歯があればその場で引っこ抜いていった。玉座の間は断末魔を思わせる絶叫で包まれた。
皇帝はそれから誰彼なしに虫歯があると見ればその場でその虫歯を抜いた。確かに虫歯はなくなっていったがそれでもだった。
怪力で歯を抜かれた後は歯茎が腫れてしまう。ピョートルの最新式西欧歯科技術を受けた者達は泣きそうな顔
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