Lv37 魔の島(i)
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のだろう。
「……確かに、コータローの言うとおりだな。それだけの報酬を払う依頼ならば、普通はしっかりとした確証を得てからだ。もし調査をしていないのならば、安易に決断しすぎという事になる。イシュラナ大神殿がそんな事をするとは思えんが……ちょっと妙だな」
「でしょ。それとですね、昨日会ったバルジという冒険者の口振りからすると、逃げ帰ってきた冒険者が、本当に洞窟から帰ってきたのかどうかという確証もないようでした。なので、なんか釈然としない話だなぁと思って、俺は昨日聞いていたんですよ」
「ン? て事は、何か良くない事があると考えているのか?」
「ええ、まぁ……そうなりますかね」
「そうか……ちなみに、どんな良くない事が起きると考えているんだ?」
「それは流石にまだ分かりません。ですが、この世の中、美味い話なんてそう簡単にないですからねぇ……。美味い話には、ちゃんと理由があると思いますし」
そう……美味い話には何か裏があるのが世の常なのだ。
これは日本でも痛いほど経験しているので、俺はよくわかるのである。
なので、バルジさんが言っていたバスティアンの財宝伝説も、俺からすると胡散臭い話に聞こえてしょうがないのであった。
だがまぁ、バスティアンの財宝については、誰にも言わないでくれとバルジさんに念を押されているので、ここでは言わないでおくとしよう。
「確かに、コータローの言う事も一理あるな。美味い話なんて、そうそう転がってるもんじゃない」
「ええ。ですから俺は、彼等に忠告だけして、その件は断ろうと思っているんです。君子危うきに近寄らず、ってやつですね」
「くんしあやうき? なんだそりゃ?」
つい日本の諺が出てしまった。が、出てしまったもんは仕方ない。
とりあえず、適当に解説しとこう。
「旅の途中で聞いた諺なんですが、優れた人格者は、むやみに危険な事へ近づかない、という意味だそうですよ」
「ははは、中々、良い言葉じゃないか。全く持って、その通りだ」――
とまぁこんなやり取りをしながら、俺達は目的地へと向かい進んで行くのである。
[U]
アウルガム湖は王都の東側にある為、アルカイム街道を一時的に進まねばならないが、ラヴァナの城塞東門を抜けて10分程の所にある十字路を右に進めばすぐなので、それほど時間を要しなかった。
まぁそんなわけで、屋敷を出てから30分程すれば、朝日に照らされて光り輝く、広大なアウルガム湖の美しい姿が見えるようになるのだ。そして、更に進んで行くと、今度は道の終点である木の桟橋の姿も視界に入ってくるのである。
前方の桟橋に目を向けると、ボートのような小型の舟が一艘だけ停泊しているのが見えた。
真っ白な美しい小舟で、見た感じだと、定員10名程度といったところだろうか。
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