Lv21 カーンの鍵
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「ヴァルの奴、一体何を始めるつもりなんじゃ……」
リジャールさんはそう呟いた後、眉間に皺を寄せ、暫し無言になった。
この様子を見る限り、リジャールさんは鍵の制作を依頼されただけなのかもしれない。
恐らく、この鍵を使って何をするのかという事は知らないのだろう。
「あの……リジャールさん、先程、『どこで材料と製法を手に入れたのか知らないが、ヘネスの月に入りかけた頃にやってきて、これを作れと言ってきた』と仰いましたが、それは本当なのですか?」
「本当じゃとも。儂は嘘は言っとらんぞ」
「そうですか……」
今の話が本当ならば、この鍵の作り方をヴァロムさんは知っていたという事になる。
でも知っているのなら、何故、自分で作らなかったのだろうか……。
ヴァロムさんは魔導器の類を自分で作ったりもするので、そこが少し引っ掛かるところであった。
「変だな……作り方を知っていたのに、何故、ヴァロムさんは自分で作らなかったのだろう……」
「なぜって……そりゃ勿論、魔法銀を錬成せねばならぬからじゃよ」
「魔法銀の錬成?」
「うむ。魔法銀の錬成には材料も必要じゃが、それの他に高度な技術と経験がいる。しかも、素材によっては、熟練の技師でも失敗する事は多々あるのじゃよ。じゃから、如何に稀代の宮廷魔導師と云われるヴァルでも、こればかりはそう簡単にはいかぬのだ」
「ああ、そういう事ですか。なるほど」
それならば納得だ。が……もう1つ謎がある。
しかし、それはリジャールさんに訊いてもわからない事なので、今は置いておく事にしよう。
「カーンの鍵か……ヴァロムさんでも作れないという事は、かなり難しい製造技術なのでしょうね……」
と、ここで、アーシャさんが話に入ってきた。
「難しいも何も、魔法の鍵の製法は、イシュマリア誕生以前の失われた古代の魔法技術ですわ。それにカーンの鍵は、かつてはイシュマリア王家も所有していたと云われる鍵です。ですから、これがあのカーンの鍵ならば、凄い事なのですよ!」
「そ、そうなんですか」
アーシャさんはやや興奮気味であった。
目を輝かせながら熱弁するアーシャさんに、俺は若干引いてしまった。
そして、今更ながらに俺は思い出したのである。アーシャさんが古代魔法文明オタクだという事を……。
まぁそれはともかく、今、気になる事を言ったので、俺はそれを訊ねた。
「アーシャさん……かつてイシュマリア王家が所有していたと今言いましたが、現在はもう所有していないという事ですか?」
「らしいですわよ。私も本当の事はどうかわかりませんが、王家が所蔵する古い書物には、2000年以上前に紛失したと書かれているそうですわ」
「へぇ、2000年以上前に紛失ですか……」
「うむ。まぁ一応、そうい
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