Lv16 黒き魔獣
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目の前に現れた10体の凶悪な魔物達……。
その姿はゲームの様なアニメ風ではなく、非常にリアルな質感を持つ、野獣といっても差支えない化け物達であった。
手足の鋭利な爪に、口が開く度に見える大きな白い牙。そして人間よりも一回り大きい体躯と、俺達を威嚇する唸り声や射抜くような眼つき。これらの外見からは、某有名漫画家が描くキャラデザインのような可愛らしさは微塵も感じられない。感じるのは、肉食獣が狩りをする時に見せる獰猛な雰囲気だけなのである。
その為、俺の中に『死』という文字が、否が応にも浮かび上がってくるのだ。
そう……死である。これがもしゲームならば、例え死んだとしても仲間が生き延びさえすれば、教会や世界樹の葉といったアイテム、または蘇生魔法で復活できることもあるだろう。
だがしかし……このドラクエ世界における死は、文字通りの死なのである。
理由は簡単だ。現状、蘇生できる施設や魔法がないからである。
一応、この国にある施設でゲームの教会に当たる役目をするのはイシュラナ神殿だが、ここの神官はそんな魔法や道具は使えない。
つまり、死んだ場合は死として扱い、現実世界の日本と同じく、埋葬や火葬を行って故人を偲ぶのである。
ゲームの様なわけにはいかないのだ。
とはいうものの、俺は一応、世界樹の葉を持ってはいる。が、あれはあまり人に知られたくはないアイテムな上、魔法で保管している状態なので、俺が死んだ場合はどうにもならない。
前もってアーシャさんに渡しておけばよかったのかもしれないが、今となってはもう遅いのである。
だからだろうか……。
この時の俺は戦いに勝つ事よりも、どうやって生きる伸びるかを模索し始めていた。そう、生きる為の道を……。
こんな魔物達を前にしても俺は冷静であった。
恐らく、毎日繰り返してきた魔物との戦闘のお蔭だろう。
そこで経験した死の恐怖や戦いの思考というものが、今の俺を冷静にしてくれるのだ。
俺はザルマとロランさん達のやり取りを注視しながらも、現状を把握する為に思考を巡らせていた。
魔物の構成とその能力、魔物と俺達の出来る事と出来ない事、敵の指揮系統、俺達との位置関係、周囲の地形の確認等を。
特に、旅が始まる前に教えてもらったサナちゃんの使える魔法や、過去にプレイしたゲームの知識などは必死になって思い返した。
そしてそれらを元に、俺は生き延びる為の策を考え始めたのである。
そんな中、ザルマは不気味な黒い水晶球を掲げ、声高に告げたのであった。
【イメリア様……私は素晴らしい力を得られたのですよ。その力を使って、貴方がたを八つ裂きにして差し上げましょう。クククククッ】
その直後、なんと水晶球から黒い霧が一斉に吹き出し、ザルマの全
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