Lv5 ミュトラの書
[1/8]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
[T]
【このマルディラントにて厳重管理されている、イシュマリア誕生より遥か昔の古代書物ミュトラの書・第二編を拝見させて頂きたいのです】
ヴァロムさんは、真剣な表情でそう告げた。
だがソレス殿下は、ヴァロムさんの言葉を聞くなり、眉根を寄せ、怪訝な表情になったのである。
「何? ミュトラの書だと……」
俺は知らないのでなんとも言えないが、この表情を見る限りだと、何か曰く付きの書物なのかもしれない。
「オルドラン卿よ、あれは確かに古代の書物ではあるが、記述されておる内容は出鱈目だと云われておるモノだ。それだけではない。光の女神イシュラナが、ミュトラの書について触れておるのは、卿も知っていよう。何故、そのようなものを見たいのだ?」
ヴァロムさんは目を閉じる。
暫しの沈黙の後、静かに口を開いた。
「……大いなる力とは何なのか……それを長年調べてまいりましたが、実はここにきて、儂も少し混乱しておりましてな。一度、原点に立ち返る必要があると思ったのです」
「ほぅ、だからか」
ヴァロムさんは頷くと続ける。
「ええ。それと殿下の仰るとおり、イシュラナの啓示を記述した光の聖典では、ミュトラの書の事を『邪悪な魔の神が、世を惑わす為に記した災いの書物』としているのは、儂も知っております。ですが、一度原点に立ち返る為にも、光の女神イシュラナが、どうしてそのような啓示をイシュマリアにしたのか、知る必要があると思ったのです」
それを聞き、ソレス殿下は顎に手をやり、何かを考える素振りをした。
「ふむ。そうであったか。しかし、あれはな……我等、八支族以外は入れぬ場所に置かれておる上に、世の人々には見せてはならぬと云われておるからの……。それに、我がアレサンドラ家が管理しているのは、九編あるミュトラの書の第二編だけなのだぞ?」
「第二編だけでも構いませぬ。そこから何かが見えるかもしれませぬのでな」
「むぅ……」
ソレス殿下は尚も渋った表情をしていた。
この反応を見る限りだと、どうやら、他人に見せてはいけない書物らしい。
しかも今の口振りだと、ミュトラの書という書物を見れるのは八支族だけのようである。
ちなみにここでいう八支族とは、イシュマリア王家から分家した一族の事で、全部で八つあるそうだ。
この間あったヴァロムさんの異世界教養講座で、一応、そう教えて貰った。
それと、王家に準ずる家系だから、このイシュマリア国の貴族の中でも別格の存在のようである。
多分、貴族階級でいうなら公爵といったところだろう。
そして、今の話の流れを考えると、どうやらこのアレサンドラ家というのは、イシュマリア王家から分家した八支族と考えて間違いなさそうだ。つまり本流ではないが、神の御子イシュマリアの血を引く一族
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ