第二章
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「あれでは船大工の中にいても不思議ではない」
「あそこまで礼儀作法に構わない皇帝も珍しい」
「しかも様々な技術も自分で身に着けている」
「真剣に学んでいるのは確かだがな」
「しかし。本を読むだけでは学んだことにしないのか」
「己で身に着けるべきか」
このことにはだ。西欧の者もロシアの者も見るべきものを見出していた。確かにピョートルは熱心に何でも身に着けようと貪欲に学んでいたのだ。
とにかく彼は真剣に学んでいた。その中にはだ。
「医学もよいな」
「何と、陛下は医学もですか」
「医学も学ばれるというのです」
「それもですか」
「そうだ。医学も最新の西欧のものを学ぶ」
その泊まっている先でだ。彼は手掴みで焼き肉を喰らいワインをごくごくと飲みながら同行している廷臣達、半ば強引に連れて来た彼等に言うのである。
「朕のこの手でな」
「ううむ。医学もロシアの為になる」
「だからこそですか」
「では早速学ぼう」
思い立つとすぐに動くのがピョートルだった。それでだったのだ。
彼はすぐに医学も学んだ。だが具体的にはどういった医学かは彼等は知らなかった。とにかく彼は精力的に学んだ。そのうえでロシアに戻った。
ロシアに戻るとすぐに宴会でまた大酒を飲んだ。しかも徹夜で。
それが終わってからだ。いきなりだった。
鋏を自ら持って留守番だった貴族達に言ったのだった。
ロシアでは誰もが髭を生やしていた。髭は男の象徴だった。髭を生やしていないと地獄に落ちるとまで言われていた。しかしだったのだ。
ピョートルは大笑いしてだ。彼等に近寄りながら言うのである。
「見事な髭だがもう時代遅れだぞ」
「時代遅れ!?」
「この髭がですか」
「西欧では時代遅れだ。だから朕が直々に切ってやろう」
こう言って実際にその髭を切ってしまうのだった。自分自身で。
彼は貴族達を片っ端から捕まえてその髭を切っていく。髭を切られた哀れな貴族達はというと。
泣きそうな顔で切られた髭を見る。だがピョートルはその彼等に笑って言うのだった。
「まあそんな悲しい顔をするな」
「あの、髭がなくなったのですが」
「こうして」
「だからだ。もう時代遅れだぞ」
こう言うのである。
「これからは髭なぞいらない。西欧化の時代だ」
大笑いしての言葉だった。髭はすぐに片っ端から切られていきロシアからなくなってしまった。そして騒ぎはこれだけではなかった。
ある貴族が皇帝の前で苦い顔をしていた。その彼を見てだ。
ピョートルは何故かにやにやとしてだ。こうその貴族に言ったのである。
「そなた、虫歯だな」
「はい、実は」
貴族もその通りだと答える。当然ながら
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