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戦姫絶唱シンフォギア〜貪鎖と少女と少年と〜
第三話 嵐の中に少年は立ち
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ましたか。ならばこんな所で路上ライブをしている場合ではない、か」

 鎖を残ったノイズに巻き付けそのまま圧殺した後、翼達がいる方へ向かおうとする少女へ鳳は声を掛けていた。

「お、おい! 待ってくれ!」
「……貴方のような」
「え……」
「貴方のような命を知らぬ者に吐く言葉は持ち合わせていませんので」

 一人取り残された鳳は去っていく少女をただ見つめることしか出来なかった。否、すぐに追いかけた。まだ自分は目的を果たしてもいない、そしてただ言われっぱなしというのも許せなかったのだ。

 ――二回だ。

 二回も自分は助けられたのだ。一人は命と引き換えに、もう一人は持ちうる力を最大限に発揮して。
 力が欲しい、とこれほどまでに強く思ったことはなかった。己の意思をそのまま()く事の出来る力が。鳳は憎々し気に歯噛みした。

「この出入口は……!」

 奇しくもここは鳳が強制的に退場させられた出入口であった。ならばこの先に命よりも大事なバンダナがある。踏み込もうとする直前――声が聞こえた。

「やめようよ、こんな戦いは! 今日出会ったばかりの私達が争う理由なんてないよ!」
「立花!? それにあれは雪音……あいつらもなのか!?」

 見間違う訳がない。翼の両隣には黄の鎧を纏った立花響、そして赤の鎧を身に着けている雪音クリスがマリア達と相対していた。ここまで来たらもう驚きはしない。そう言う事だったのだ、と受け入れるしかない。

「そんな綺麗事をッ!」

 それよりも鳳は響の言葉で途端に表情を曇らせた調と切歌が気になって仕方がなかった。そしてもう一つ。先ほど命を救われた相手であるあの少女。

(あの子がいない……? どこへ行ったんだ?)

 同じ方向を走っていたはずなのに、鳳が確認できるのはマリア率いる三人組と翼達三人計六人。
 そうしている間にも調と響の問答が続いていく。調に溜まる憎悪の凄まじさはとうの昔に気付いていた。いかに過ごしていたら――否、その詮索は無用であり余計なお世話。
 響の言葉を真っ向から否定する調は更に続ける。怒りを上乗せして。

「話せば解る……戦う必要は無い……そんな事を簡単に言えるから。だから――この世界には偽善者が多すぎるッ!」

 ――少しばかりカチンときた。だがその前に。
 鳳は観客席の一つへと歩を進める。そして手に取るは、手すりに引っかかっていた自分の命よりも大事なモノである赤いバンダナ。それをいつものように頭に巻き、しっかりと結んでやった。命を噛み締めるように。
 キリリと身が引き締まる想い。ふわついていた心に一本芯が通るようなこの感覚。それに任せるように鳳は前へと歩いて行った。
 そしてあろうことに――吠える。


「――――偽善が悪いかッ!!
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