巻ノ九十八 果心居士その二
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「だからじゃ」
「果心居士という者もですな」
「放っておきますか」
「別に天下にも民にも害を為さぬので」
「それで、ですな」
「よい」
板倉はまた言った。
「それよりもわかっておるな」
「ですな、大坂殿ですな」
「またおかしなことをされようとしています」
「茶々様にも困ったことですな」
「実に」
「そうじゃ、あの方は何もわかっておられぬ」
板倉はその面長で白いものが目立つ髪をまとめた髷がその面長さのせいか余計に目立っているその顔で言った。
「政がな」
「あそこまでわかっておられぬとは」
「困ったことですな」
「あの方についても」
「まことに」
「大御所様の言われる通りにされればな」
茶々、彼女がというのだ。
「何しろ正室にどうかとまでな」
「大御所様はそこまでお考えですな」
「茶々様をと」
「そうして身の安全を約束される」
「そうお考えなのですが」
「茶々様はな」
その彼女はというのだ。
「わかっておられぬ」
「そうしたことまで」
「それ即ち豊臣家の安全を約するということなのに」
「そのことさえも」
「しかも勝手をされようとする」
板倉も困っていることだった、家康の考えがわかっているが故に。
「豊臣家を滅ぼすおつもりはない」
「大御所様には」
「全く」
「そうじゃ、それがな」
「どうにもですな」
「あの方はおわかりになっていませぬな」
「逆に豊臣家を滅ぼそうとしているとですな」
「思われていますな」
「そうではないのだが」
家康の考えはというのだ。
「上様は幾分厳しくしたいと思われているがな」
「はい、江戸のあの方は」
「そうですな」
秀忠はとだ、周りの者達も言う。
「そうお考えと聞いています」
「豊臣家に対して」
「大御所様は寛大にですな」
「そうされたいのですな」
「うむ、大和一国でもな」
百万石を持つこの国でもというのだ。
「与えてな」
「そして官位も高い」
「そのうえで遇されたい」
「そうお考えですな」
「だから茶々様を正室にとも言われたのじゃ」
そこまでというのだ。
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