第二話 踏み込み始めた“非日常”
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はその身を物言わぬ炭素と昇華させられてしまったのだ。その光景をまざまざと見せられた鳳は吐き気が込み上げてくるもそれをグッと飲み込み、代わりにとばかりに男が最後まで握っていたトランクを掴んだ。
――トランクを。
自身が果てる刹那、男が漏らした言葉であった。何が入っているとも、どうすれば良いのかも分からない。だからとてそれがこのトランクを掴まない理由にはならない。一人ではないはずだ。これがそれほど大事なモノならば、いつかこれを回収しにくる者がいるはずだ。それまでは自分が預かっている。
そのつもりだった。
「……嘘、だろ」
鳳の前方に現れた一体のノイズ。後ろを振り向くと、そこには更に二体のノイズ。囲まれてしまっていた。翼がいるステージからはちょうど死角となる位置。助けを求める事も出来ない。元より、そんなことは露とも選択肢には入っていなかったが。
本格的に打つ手が無くなってしまった。一か八か前方のノイズの横をすり抜けるように立ち回るか。気持ちが昂っているのか自然と身体がリラックスしている。これなら。
そう思っていると、ふと何かの気配を感じ取り、鳳は上を見上げた。
「――ノイズ」
階段に茶髪セミロングの少女が立っていた。段を一段降りるたびにおさげが揺れる。その瞳はどこか輝きが濁っていて。
「あ……」
鳳は息を呑んだ。彼女の顔を一目見た瞬間、胸がどうしようもなく締め付けられてしまった。心臓の鼓動が早くなる。あまりにも唐突で。それに理由を付けたいのにどこか認めたくない自分もいて。
何せ馬鹿げている。こんな死ぬか生きるかの瀬戸際だというのに。なのに、彼女を一目この眼に収めた瞬間からこの少女に――――。
「ごめんなさいナスターシャ教授。駄目なのですよ、私。どうしてもこの塵芥が人を襲っているのを目の当たりにするとこちらを優先してしまいがちになってしまいます――割り切らなければならないはずなのに」
そんな鳳の動揺など露知らず。少女は胸に着けていたモノに手をやった。ソレを見た瞬間、鳳は驚愕する。
「それは……!?」
ノイズを冷ややかに見つめた後、少女は瞳を閉じる。
「だから――歌いますよ、私は」
――鎖を抱き、涙を捨てていく
少女の唇から紡がれるのはマリアが歌っていたのと非常に良く似ている歌であった。――なれば彼女もまた《《そうなのだろう》》。
少女が光に包まれる。数度の瞬きの後、その光の繭から顕現したのは灰色の鎧を纏った少女であった。感触を確かめるように右手を握っては開いてを何度か繰り返し、自らに攻撃対象を変えたノイズ三匹を視界に入れる。力は十全
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