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戦姫絶唱シンフォギア〜貪鎖と少女と少年と〜
第二話 踏み込み始めた“非日常”
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を奮い立たせるように、否。これは確認事項だ。何があっても己を見失わないように。

「ここだ……!」


 ――鳳の視界(世界)に入り込んできたのは、戦場(いくさば)である。


 鳳はライブ会場に入ってすぐに身を隠し、今起こっていることへの理解に努めようとする。

(なんだよ……どうなっている? 風鳴がマリアと同じような恰好をして戦っているだと……!?)

 彼の眼にまず飛び込んできたのは青い鎧を纏った翼がマリアと戦っている場面であった。眼で追うのがやっとという速度で刀を振るう翼に素人らしさは全く見受けられない。むしろ――明らかに生業(なりわい)としている流麗かつ鋭い所作である。
 戦いの“た”の字すら知らぬ鳳が見てそう思ったのだ。なれば相手をしているマリアはそれをひしひしと感じていると見て間違いないだろう。

「ノイズがいない……風鳴がやったのか……? あの刀で? ……まさか。嘘だろ? あれが――『シンフォギア』って奴なのか……!?」

 ――シンフォギア。
 その名を知らぬ者は恐らくこの世界の人間ではないとされるほど、その存在は衝撃的なモノであった。現行、認定特異災害たるノイズに対抗しうる唯一の装備である。細かいこともあらゆるメディアに載っていたが生憎と目を滑らせていたのでこれだけしか分からない。だが、それだけ分かっていれば十分であった。
 今自分はとんでもない場所に居るのかもしれない。本気で鳳は後悔に似た何かを感じていた。あの風鳴翼とマリア・カデンツァヴナ・イヴが実はシンフォギアの装備者とは誰が予想出来ようか。
 そんな事を考えている間にも打ち合いは苛烈さを増していく。そして刃を重ねる度に鳳の眼からは翼が一枚上を行っているように映る。数度の斬撃の後、翼がマリアの持つ槍を弾く否や、彼女は握っている刀を双刃へと変形させた。

「歌を歌いながら……!?」

 鳳は自分の耳と目を疑う。双刃に炎を纏わせ、足首のスラスターを噴射させそのままマリアへと突撃する翼。その間、ずっと歌っていたのだ。まるで歌うのが当たり前とばかりに。なぜ歌うのか、そんな疑問などまるで浮かぶこと自体が常識外れかのように。
 炎撃一閃。すれ違いざまに翼は双刃を走らせ、マリアへ手痛い一撃をくれてやった。元よりスピードは上回っていた翼にとって一瞬の隙はそのまますなわち万全の好機と同義。そのまま翼は双刃を携え、よろめいているマリアを完全に動けなくさせるべく接近する。
 ――そしてマリアへとあと一歩という時、“彼女達”が上空から現れる。

「あいつらは!?」

 思わず鳳は声を出していた。無理もない。今しがた現れ、翼へ攻撃を仕掛けたのは先ほど言葉を交わした二人――調と切歌だったのだ。
 それだけではない。

「あれもシンフォギア…
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