第六章
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「言うしね」
「そうなの」
「だから思うんだ、奥瀬さんは物凄く性格がいいって」
「そうかしら」
「そもそも今こうして僕と話してるよね」
このことも言うのだった。
「二人で」
「何か二人きりになったし」
これは周りがあえてそうさせた、だがそれでも二人だけになっているのは紛れもない事実である。
「それならね」
「僕もだよ、それはね」
「二人になったらね」
「そこで逃げなかったよね」
「逃げないって」
「僕と話してくれる、そのことだけでも嬉しいよ」
「普通のことでしょ」
理彩は藤太の今の言葉に怪訝な顔になって返した。
「誰とでも」
「そうでもないよ、僕を無視して一人になろうと思えばなれるじゃない」
「まあそれは」
「そうした奴にも合って来たから」
藤太はここで暗い顔になった、過去を思い出して。
「僕が人と話をしてたらその相手を囃し立てたりね」
「そんなことは性格の悪い人がすることでしょ」
「そう思うんだ」
「そんなつまらないことするなんて」
それこそとだ、理彩は眉を顰めさせて言った。
「小さいわよ」
「奥瀬さん絶対にそんなことしないから」
「だからなの」
「うん、そうした性格だから」
だからだというのだ。
「僕はね」
「そうなのね」
「そうだよ」
ここからのことは多くは言わなかった、言わずともだからこそ。
「性格が一番ね」
「わかったわ、私の性格を見てくれてなのね」
「そうなんだ」
「わかったわ」
ここでだ、理彩は決めた。そうしてだった。
藤太に顔を向けてだ、にこりと笑って言った。
「またね」
「またって？」
「明日も。田坂君がよかったら」
こう前置きして言うのだった。
「一緒にこうして歩いてくれるかしら」
「明日も？」
「それからもね」
こう言うのだった。
「一緒にね」
「じゃあ」
「うん、こうしてね」
理彩の言葉は笑顔のままだった、そしてだった。
この日二人は最後まで一緒にいて次の日から二人でよく話す様になった、そして一緒にいる様になった。
そうなってからっだ、藤太は笑顔で周りに言う様になった。
「僕みたいに幸せな奴いないね」
「そう言うのかよ」
「まあ言うと思ってたけれどな」
「本当に嬉しそうだな」
「心から幸せなんだな」
「うん、幸せだよ」
実際にとだ、彼は言った。
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